アジアの実力あるMMA選手がUFCの契約権をかけてトーナメントを争う「ROAD TO UFC」。3回目となる『ROAD TO UFC Season3』では、日本人8選手を含む総勢32名の総合格闘家が、男子フェザー級、男子バンタム級、男子フライ級、女子ストロー級の4つの階級で頂点を目指します。
今回初めて実施される女子ストロー級では、元DEEP JEWELSストロー級暫定王者の本野美樹選手がUFC女子ストロー級王者を擁する中国の地で、地元・中国の選手との1回戦に臨みます。そんな本野選手が、出発前に日本で意気込みを語ってくれました。
──RTU参戦が決まった瞬間の感想を教えてください。
本野:絶対チャンスはくると思っていたから、やっと来て。素直に、チャンスが来てうれしかったです。
──1回戦で対戦する中国のホアン・フェイル選手の印象は?
本野:打撃、ストレートが鋭いイメージと、フィジカルが強い印象があります。
──ホアン・フェイル選手が身長差165.1cm、本野選手より5cmほど高いですが体格差として認識していますか?
本野:リーチ差はあるなって感じています。ただ前回の対戦相手のフォン・シャオツァン選手(本トーナメントに出場。本野選手は23年、一本負け)は自分より10cm以上身長が高くて(172.7cm)、向かい合ったときにリーチ差あるなと思ったけれど、それでもしっかり組みにも、テイクダウンも何度もいけたので、そこは大丈夫かなと思っています。
──前戦の相手と比べてもテイクダウンは問題なくできそうですね。
本野:そうですね、あれほどの身長差ではないので。自分としては、しっかり組みにも行くけど、打撃にもすごい自信がついてきているので、どっちでも戦えるようにしっかり圧をかけていきたいと思っています。
ただ、どちらかというと打撃の選手ではありますが、フィニッシュとKO率が半々なので、寝技もできる選手でしょうから、油断できない相手だと思っています。ストレート狙いなのと、あと、最近タイで練習していたみたいなんですよね。前回、前々回くらいから肘とかコンパクトな打撃を使っているので、距離が近づいたときにも油断しないで気をつけたいと思っています。
──この舞台でどんな試合をしたいと思っていますか?
本野:私自身、成長しているので。日に日に自信がついて今は勝つイメージしかないんです、100パーセントと言えるくらい。あとはそれをしっかり試合で発揮したいです。出さずに終わるのはもったいないので、全部出し切りたいです。内容的には今まで以上に攻撃的なかつ丁寧な試合をやってしっかり勝ちたいと思っています。
──その上で、実際の展開はどんなふうになっていくと予想していますか?
本野:実際には相手選手も結構フィジカルが強く、簡単に倒せたりテイクダウン取れるというような相手ではないと思っているので、そういうところも踏まえてしっかり自分のやるべきことをやって相手を削って、自分の勝ちパターンに持っていきたいと思います。
──オープニングラウンドは上海PIが会場で、そこで中国の選手との対戦となります。完全アウェーの状態だと思いますが、そのあたりの心境は?
本野:今回、中国の選手がトーナメント8人中4人いるので、とても多いですね。UFC本戦を見ても、女子ストロー級はチャンピオンがジャン・ウェイリー選手で中国人です。UFC 300で、中国人対決のタイトルマッチをしたヤン・シャオナン選手もそのすぐ下にいる(2位)ので、この階級のUFCのトップが中国の選手なのは確か。だからこそ日本の選手も強いのだと、RTUを通じてしっかり見せたいと思います。
あと、実は前戦も中国のプロモーションで試合をしたのですが、色々とアウェーの洗礼を浴びましたので、それに比べればUFCが運営しているイベントなので、全く問題ないでしょうし、もうどこでも大丈夫だと思っています。
──女子ストロー級トーナメントの中で、ほかに注目している選手や戦ってみたい選手はいますか?
本野:先ほどから名前が挙がっている、前回負けてしまったフォン・シャオツァン選手が出場するので、リベンジも含めて考えて、最後は自分が優勝したいと思っています。ただ、今は次に当たる選手だけ見据えています。そこで勝たないと意味がないので。今はこの1回戦のことだけを考えています。
──UFCにつながる舞台に出場するにあたって、どんな選手として、世界の人にこの試合に注目してもらいたいですか?
本野:やっぱり「強い選手が来た!」と思われたいのはあります。UFCとの契約をしっかり勝ちとって、本戦に出てからはまずランキングに入れるように頑張っていきたいと思っています。
──試合に向けて、どのような練習環境で取り組んできましたか?
本野:今はAACCと、リバーサルジム横浜グランドスラムにも週の半分くらい行かせてもらって、あとはバンゲジムの白川さんという方にミットを持ってもらって、打撃の指導をしてもらっています。
──出稽古の手応えを教えてください。
本野:グランドスラムの選手は、倒されたあとも動きが止まらなくて、ずっと動き続けているような選手が多いので、すごくいい練習にもなりますし、たとえばフライ級キングオブパンクラスの伊藤盛一郎選手はもともと柔道出身というのもあって、私も柔道ベースでやっていたので、すごい教えてもらっていてわかりやすいというか、自分に合う試合の進め方とか、教えていただけるのですごい助けてもらっています。
──伊藤選手の仕掛けの速さを体感していかがでしたか。
本野:本当に速いです。倒したあとも、倒されたあとも、自分が思っている展開の先を読んで動いているので、本当にすごいんです。真似したい!と思いました。スクランブルでもかなり自信がついています。
──対戦相手の対策は同門の女子選手に動きを真似してみてもらったりはしたのですか?
本野:どちらかというとグラウンドスラムで、相手を仮定して打ち込みをやってもらうということをしていました。AACCには女子選手が多いので、グランドスラムでやったことを、AACCの女子選手に試すという形で分けてやってきました。そこにバンゲジムでの打撃の練習を加えることで最高な練習環境でできていると感じているので、あとは自分が勝つだけです。
──RENA選手のタイ修行にも同行されていましたよね?いかがでしたか?
本野:本当に練習だけ、格闘技だけをやれていた期間なので、すごく充実していましたし、打撃ももちろんなのですけど、一番レスリングの練習がきつくて。精神的にも鍛えられたというか。女子の選手はほとんどいなくて、ほとんどが男子選手で、若い選手と組むことが多かったのですが、本当に練習の内容自体が、誰がやってもキツくなるようなものだったという感じですね。あれをがんばってきたので、気持ちの面でもかなり自信をつけています。女子選手だとONEに出ているメン・ボー選手はいました。ほかは割と大きい階級の男子選手が多くて、100人くらいはいましたね。
──前回の敗戦から学んだことは?
本野:思ったよりテイクダウンが取れるところまではいったのですけどそのあとの攻め方や対処が本当に雑だったという反省点があるので、次に当たったといきはしっかりそこを改善してやろうとは思っているのですけど、先を見据えすぎても足を掬われるので今は次の相手だけを考えています。ただ今後にも必ず使えるので、雑になった部分は丁寧にできるように今回も課題にしています。
前回の相手に対しては正直「意外と倒せる」って思ったんですけど、手足が長いので、柔術的な動きがちょっとやりづらくて。そこを思い切りパウンド行っちゃったりとか自分の動きが大きくなって相手につかまっちゃったりというのがあったので、倒したあとの対処が相手もうまいので、自分もしっかり細かいところを修正して戦わないといけないと思いました。
──UFCがどのような舞台だから、本野選手はそこを目指してがんばれているのでしょうか。
本野:やっぱり、柔道でもオリンピックを目指していた時期があって、だけど世界には行けなかった、という結果があって。格闘技で世界の選手と触れ合って、今度こそはというか。世界チャンピオンになる、世界で戦うんだという目標がパッと出てきました。実は私は国内しか見えていなかったのですが、アメリカ修行のときにアンジェラ・ヒル選手のようなUFCストロー級ランカーとも練習できて。挑戦者のつもりで、これが試合だったらと思ってスパーをお願いしたのですが、テイクダウンもとれたし打撃で圧倒されすぎることもなく、成長すればここまで行けると実感できたのがまず目指し始めたきっかけなんです。
自分が思い描いていたUFCトップ選手は「バケモノでしかない」というイメージしかなかったけれども、「行けなくない」と思ったことが一番です。自分も目指せると思えたことが大きかったです。どうすれば行けるかは正直よくわからなかったのですけれど、絶対にチャンスはあるって思っていました。
──目標が定まったことで練習での取り組みも変わりましたか?
本野:変わりました。今まで曖昧に練習していた部分もあったのですが、UFCに出るんだ!という目標を持ってからは、もっと考えるようになった。前まではスパーが好きでスパーばっかりやっていました。でも今は勝つための打ち込みだったり細かい技術であったり、そういうところをしっかり練習するようになったので、考え方が変わりました。
──UFCのランカーにも柔道ベースの選手がいますが、自分への自身につながりますか?また、アマンダ・ヒバスの投げ技など見ていて、どういう印象でしたか。
本野:柔道をやっていると寝技が強いっていうイメージがあると思うのですけど、柔道時代は正直寝技が嫌いで(笑)、ずっと立ち技で戦ってきたので、当時はMMAやるとは思っていなかったですけれど、もっと寝技やっておけばよかったとは思っているのですけど、柔道で戦ってきたこともいかせているし、だからといって柔道にこだわることはないですし、打撃だったりレスリングであったりとやることが多くて、楽しいなっていうのが一番自分のなかで大事な部分だと思います。と、私はあまりリスクのある柔道の投げ技は使わないので、柔道出身の選手の試合を見ていても「なんで今そこでかけてしまったのだろう」と思うものは自分が気をつけようと思ってみたりしています。
──周りの選手たちからはどのような言葉をもらっていますか?
本野:「やっと(チャンスが)来たね、がんばってUFCに行ってね!」っていう言葉をたくさんかけてくれます。練習のなかでも、グランドスラムの選手が「今のはよかった!」とか「ここはちょっと危ないよ」と声かけてくれたり。白川さんは相手の動画を見てくれて、自分にあった戦い方をこまかく教えてくれているので、だいぶ自信がついてきました。
──最後に、U-NEXTのライブ配信を通して応援するみなさんに、メッセージをお願いします。
本野:優勝してUFCの切符をつかみたいと思っています、応援よろしくお願いします。
エピソード1:5月18日(土)日本時間19時開始
【男子フェザー級(65.8kg以下)1回戦】ズー・カンジエ(中国) vs. 安藤達也(日本)
【男子フェザー級(65.8kg以下 )1回戦】原口伸(日本) vs. ホン・ジュニョン(韓国)
【女子ストロー級(52.2kg以下)1回戦】フォン・シャオツァン(中国) vs. キラン・シン(インド)
【女子ストロー級(52.2kg以下)1回戦】ホアン・フェイル(中国) vs. 本野美樹(日本)
【ウェルター級(非トーナメント)1回戦】バテボラティ・バハテボラ(中国) vs. キム・ハンスル(韓国)
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