世界中で大ヒットしたサバイバルドラマ『ウォーキング・デッド』。“ウォーカー”と呼ばれるゾンビがはびこるアメリカを舞台に人々が生き抜く姿を描き、11シーズンのロングランを記録して2021年に放送を終了したが、2022年から現在にかけて、主要キャラクターのその後を描いた新たなスピンオフシリーズが続々制作・公開されている荒廃したニューヨークを舞台にしたマギーとニーガンが主役の『ウォーキング・デッド:デッド・シティ』、リックとミショーンが主人公の『ウォーキング・デッド:ザ・ワンズ・フー・リブ』、本家に出てきたキャラクターの知られざるストーリーも綴られる『テイルズ・オブ・ザ・ウォーキング・デッド』…。
今回お届けするのは、大人気のキャラクター、ダリル・ディクソンを主人公に迎えた『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』。すでにシーズン2の制作も決まっている本作は、海を漂流していたダリルが異国に辿り着くところから始まる。見慣れない標識等を目にして、自分が故郷から遠く離れていることに気がついた彼は、なんとかしてアメリカに戻ろうとするが、仲間はおらず、言葉の問題もある。ウォーカーたちの襲撃に遭いながらも帰る手がかりを探す彼は、荒れ果てた教会で暮らす修道女たちと少年に出会い、旅を共にすることに。道中で様々な人々に出会う一行だが、ウォーカー以外にもダリルの道に立ち塞がる新たな敵が登場し…。
『ウォーキング・デッド』ではシリーズを通してどんどん人間味が増し、様々な顔を見せていたダリル。本作でもそのカッコ良さは健在だ。ウォーカーとの戦闘では相変わらずスカッとする圧倒的な強さを発揮。ファンにとってはそれだけでもたまらないが、異国で文字通り“一匹狼”の彼は言葉の壁を感じたり、他国の現状を目にして戸惑う表情も見せる。フランスでは“外国人”という立場だが、人の優しさや強く生きる子どもたちの姿を見て、少なからず感動する場面も。「フランス語はできない!」と言っていたダリルがいつしか「ボンジュール」と言うシーンも出てくるので乞うご期待!
本家と同じ世界観、同じダリルにもかかわらず、舞台がフランスになるだけでこうもトーンが変わるのかと驚くだろう。ウォーカーに襲撃されたり、人間同士の争いがあったりと、本家の流れを汲んでいることは間違いない。だが、エッフェル塔が崩壊していても、フランスはやはり芸術の国フランスなのだ。ロケ地はなんと、歴史的にも重要なパリの地下にある納骨堂カタコンベ・ド・パリ、ルーヴル美術館、パンテオン、セーヌ川、モン・サン=ミッシェルなど。ダリル役のノーマンが本作の制作に関して、「アートを作っている」とコメントしているのも頷ける。「過去に現実に起こった紛争の後もこんな風に荒れ果てたのだろう。だが、いつかまた煌びやかなフランスに戻るはずだ」。なぜかそんな希望も湧く、美しくも荒廃した舞台からも目が離せない。
キーパーソンはダリルが共に旅をするローランだ。口数が少なく一見強面のダリルだが、相変わらず子どもには深い愛情を抱いている。周囲から「特別だ」と言われるローランのことは普通の少年だと思いつつも、父親のような存在となっていく。だが修道女のイザベルは、ダリル自身もローランにとって「特別な」存在であると告げる。本作はローランを中心に、ミステリー要素も多く含んでいる。そもそも、ダリルはなぜフランスに辿り着いたのか。ローランが「特別」と言われる理由はどこにあるのか。なぜダリルはローランにとって特別なのか。そんな謎に包まれた本作は、本家よりもミステリー色の強いサバイバル/アクション/ヒューマンドラマになっており、本家未視聴の方でも十分楽しめる作りだと言える。
ダリル・ディクソン
本家で一番人間味あふれると言っても過言ではないキャラクター。粗野で寡黙な一匹狼気質だが、戦いの腕はピカイチ。本作ではフランスに辿り着き、なんとかしてアメリカに戻ろうとする。フランス語が話せないため、イザベルたちに通訳してもらうことも。
キャスト:ノーマン・リーダス
アメリカ出身。プラダなどでモデルを務め、レディー・ガガやビョーグのミュージックビデオにも出演。写真家として個展を開くほど活躍すると同時に俳優業にも勤しむ。『ウォーキング・デッド』のダリル役で世界的知名度を得た。パートナーはドイツ出身の女優ダイアン・クルーガー。
◆代表作:『処刑人』『マイ・ライフ・メモリー』『AIR/エアー』
イザベル
人類の再生を信じる「希望連合」のメンバーとして慈善活動を行う修道女の一人。数奇な運命によって修道女になった過去を持つ。出会った当初からダリルに対してある種の信頼を寄せており、ダリルがアメリカに帰れるよう道先案内人として共に旅をするようになる。
キャスト:クレマンス・ポエジー
俳優の父を持つクレマンスは10代の頃から女優として活動。2004年の英国ドラマ『レジェンド・オブ・サンダー』で英語圏の作品に初参加し、『ハリー・ポッター』シリーズではフラーを演じた。イザベルと同じく語学に堪能で、フランス語と英語のほか、スペイン語、イタリア語も話す。
◆代表作:『127時間』『ゴシップガール』『TENET テネット』
ローラン
イザベルら修道女に守られて暮らす孤児の少年。アメリカ人で大人の男性であるダリルに興味を示す。修道女たちからは特別な存在だと思われており、本人も知らないその生い立ちに秘密がある。頭脳明晰でダリルと英語で対等に会話をする。
キャスト:ルイ・ピュエシュ・シグリウッツ
2011年フランス生まれ。オーディションを経て出演が決まった本作が本格的な俳優デビューとなる。撮影中にずっと笑わせてくれたノーマンとの共演シーンは楽しかったと語る。
シルヴィ
イザベルと同じ修道女で、周りの修道女より若いこともあり、ローランにとっては姉のような存在。おっとりした雰囲気とは裏腹に武器を扱うことにも慣れており、ダリル一行のメンバーとして旅をしていく。
キャスト:ライカ・ブラン=フランカール
2003年生まれのライカは、文字通りローラン役のルイの姉と言ってもおかしくない。ダリル以外のキャストと同じくフランス人だが、流暢な英語を話す。その他の出演作は『Le monde de demain:明日の世界へ』など。
タイトル:『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』(原題:The Walking Dead: Daryl Dixon)
制作年/制作国:2023年/アメリカ
ジャンル:ドラマ/アクション/サバイバル/ホラー
U-NEXTにて独占配信中
2024年に観た作品の中で、最も記憶に残っている、人におすすめしたい作品を宇多丸さんに聞きました!