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1月から連続2クールで現在放送中のアニメ『ダンジョン飯』。シリーズ累計発行1000万部超の人気を誇る同名漫画が原作で、アニメ制作は『SSSS.GRIDMAN』などを代表作に持つアニメスタジオ・TRIGGERがつとめ、躍動感あふれる作風が随所で炸裂しています。
ファンタジー×グルメというジャンルで、これまでにない切り口から食を見つめることを通して命のあり方を丁寧に描く意欲作として人気を博す『ダンジョン飯』。その魅力が伝わる名言をご紹介します。
第2話「ローストバジリスク/オムレツ/かき揚げ」に登場する、いかにもどこかで聞いたようなフレーズ。まるで生活習慣病改善のための標語のようです。しかしこのありふれているようなセリフが、『ダンジョン飯』を象徴する名言なのです。
物語は、主人公・ライオスが、冒険の途上でレッドドラゴンに食べられてしまった妹のファリンを奪還するため、一度は全滅したダンジョンにリベンジを挑むところから始まります。
ダンジョンには特別な魔法がかけられていて死者を蘇生させることができるため、ドラゴンに食べられて完全に消化される前に助け出す必要があります。一刻を争う事態にあって、先立つもののないライオスたちは、ダンジョンで出会う魔物を倒して食べる“自給自足”をすることに。
そんな無謀な決心を固める一行を見かねて、ダンジョンでの魔物食生活の先輩であるドワーフのセンシが手を貸してくれ、前代未聞のグルメ旅が始まったのです。
第2話では、頭と四肢、胴体が鶏で尻尾が毒蛇という魔物・バジリスクが戦いの相手です。なんなく倒したバジリスクをこんがり焼いて、今回も美味しくいただきます。バジリスクに全滅させられていた別の冒険者たちに、どうすれば魔物を食材にできるほど強くなれるのかと問われて、センシが力強く答えたのがこの名言でした。
「まず食生活の改善!! 生活リズムの見直し!! そして適切な運動!! その3点に気をつければ、おのずと強い体は作られる!」
しごく当たり前のことですが、その3原則を徹底するのが難しいことも私たちは知っています。でなければ、こんなに多くの人が生活習慣病に苦しむことはありませんから。
医食同源という言葉もあります。食事も医療も、身体を内側から労るという本質はほとんど変わらないのです。
健全な精神は健全な肉体に宿るとはよく言ったもので、やはり生物の資本は肉体にあります。そして、自分の肉体を労わること、倒した魔物を美味しくいただくことは、実はともに『ダンジョン飯』がテーマに据えている「命を大事にする」という大事な価値観で繋がっているのです。
続いても、第4話「キャベツ煮/オークで、魔物食の達人・センシによる非常に含蓄に富んだセリフです。
妹のために昨日今日でダンジョンでの自給自足生活を始めたばかりのライオスたちと違い、センシはダンジョン飯歴10年以上にもわたるベテラン。
なんとセンシは、土でできた魔法生物・ゴーレムの体を畑代わりにダンジョンで野菜を栽培していたのです。
襲ってくるゴーレムのコアを手慣れた様子で探りあてて無力化するセンシ。立派に育った野菜をその身体から収穫すると、再びコアを戻して、ゴーレムの復活を手助けします。
新鮮な野菜の収穫を喜ぶ一同でしたが、食事後、センシがダンジョンの便所から糞尿を汲み取ってゴーレム畑のための肥料をつくろうとしている様子を見つけてしまいます。
ライオスは、センシに疑問を投げかけます。自給自足は地上でもできるのに、どうしてそこまで迷宮にこだわるのか?と。
センシは「ダンジョンも畑も一緒だ、ほったらかして恵みを享受することはできない」と応えます。
ダンジョンにも地上と同様、生態系が存在します。倒れたゴーレムを起こす者がいなければ、階下の魔物が上がってくることになり、今とは全く違う場所になってしまうのです。
「何より、ここで育ったものを食べ、自らもダンジョンに分け与える。そうして暮らしていると、ようやくこの迷宮の中に入れたように思える。それが嬉しい」のだと。
現代の私たち人間には天敵も存在せず、何かに捕食されるようなことは稀です。そのため、私たち自身は食物連鎖から弾き出された孤独な種族とも言えます。しかしダンジョンにおいては、全ては巡り巡っている。食べることの前では、皆公平です。そしてそのことを受け入れることによって初めて、私たちも生態系に組み込まれる。あらゆる種族が文字通り平等なダンジョンが、そのことを思い出させてくれるのです。
みんなが、センシを見直した瞬間でした。
最後は、5話「おやつ/ソルベ」で、仲間たちを怒らせたライオスの名言(迷言?)をご紹介。
今回は、ライオス一行の前にダンジョンで死体に集まって冷気を振りまく幽霊たちが立ち塞がりました。死体に取り憑くとゾンビとして動き出すという厄介な相手です。
幽霊の相手が得意だったファリンがいないため四苦八苦していたライオス一行でしたが、ここでもセンシが大奮起。お手製の聖水を瓶詰めにして、それを振り回して幽霊を退散させました。
すると手元には、幽霊たちの冷気で固まった聖なるアイスが残ったので、みんなで食べて一息つくことに。
そこでライオスがつい口にしてしまったのが「ファリンがいたら、今頃こんなおいしい物は食べられなかったろうな」というセリフでした。当然、この発言は一刻も早くファリンを助けるために同道してくれている仲間たちの不興を買うことに。
ファリンさえいれば「憂いあれば喜びありってことだよね」というフォローをしてくれたろうに、とライオス自身が嘆くように、物は言い様です。不用意な表現だったことは間違いありませんが、ここにはライオスの素直な気持ちも込められています。
ライオスを形容する時、“妹を取り戻すために魔物を食べてでも強行軍を続ける兄”という説明は、たしかに表面的な事実だけを取り上げれば間違ってはいません。ですが、彼の性質を十分に表現しているとも言えないでしょう。
魔物好きのライオスは当初から、魔物を食材とする冒険に嬉々として身を投じています。むしろ水を得た魚とばかりに、生態だけではなく命をも味わい尽くせる魔物食に向き合います。
言ってしまえばライオスは、魔物を食べながら妹を取り戻すこの冒険を、どこかで心から楽しんでもいるのです。少なくともそれは良識に照らせば不謹慎で、他人には理解できない類の暗い欲望でもあります。
ただ、原作を読んでいる読者は知っているのですが、このセリフは物語の終盤で変化した形で、再び登場します。ライオスたちの旅はむしろ、ある意味で伏線にもなっているこの一言を本人たちや視聴者に納得させるための歩みであると言っても過言ではありません。
どんな深刻な使命があろうが重大な大義があろうが、別に始終深刻ぶっている必要はなく、その過程を楽しんだっていいのです。腹が減れば飯を食う、そしてせっかくならその飯は美味いほうがいいし、そうしたら生きる上での義務である食事も楽しめるのですから。
以前、『葬送のフリーレン』の名言3選でも紹介した「終わった後にくだらなかったって笑い飛ばせるような楽しい旅がしたいんだ」というセリフと同じ味わいがある、と言えば伝わりやすいでしょうか。
他者の命を損ねて食材にして食べる行為を心から楽しむ──もしかしたらそれこそが命を慈しむこと、食と真摯に向き合うということなのかもしれません。
トリッキーな魔物食という題材を通して、壮大なテーマに挑む『ダンジョン飯』。彼らの旅が、アニメでどのような終幕を迎えるのか、一緒に見届けましょう。
アニメ版はこちらから
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