みなさん、事件です(バカリズム風)。バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、あの超人気企画「名探偵津田」の第3弾が12月11日、12月18日の2週連続で放送された。
当初は「有名人の卒業アルバム その地元に行けば意外とすんなり手に入る説」というタテマエになっていて、「名探偵津田」であることは完全シークレット。すると、ダイアン津田がプレゼンターとして登場していたスタジオ収録中に、パネラーのアンガールズ田中が何者かによって射殺されるという事件が発生。強制的に芸人津田は名探偵津田として捜査する羽目になり、やがて謎の連続殺人事件に遭遇することになる。
この嬉しい騙し討ちにSNSは大騒ぎ。SNSのXではさっそく「名探偵津田」トレンド入りし、「待ってました」「嬉しすぎる」と、歓喜のコメントが並んだ。どれだけこのシリーズがファン待望の企画だったかは、4月24日に放送された「視聴者&出演者が選ぶ“一番好きな説”ランキング」を見れば一目瞭然。2位以下に圧倒的な大差をつけて、1位に輝いたのだ。
10位:結果発表シリーズ(538票)
9位:大江裕なら裏の顔がどんなにヤバくても、さほど違和感なく受け入れちゃう説(586票)
8位:フューチャークロちゃん(714票)
7位:キグルミの中から「お前ヤっちまうぞ」などの脅迫めいた言葉が聞こえてきたら超おっかない説(744票)
6位:人がいるシリーズ(862票)
5位:モンスターアイドル(868票)
4位:どんなにバレバレのダメドッキリでも芸人ならつい乗っかっちゃう説(942票)
3位:新元号を当てるまで脱出できない生活(2132票)
2位:「ラヴィット!」の女性ゲストを大喜利芸人軍団が遠隔操作すれば、レギュラーメンバーより笑い取れる説(2996票)
1位:名探偵津田(4348票)
本人が預かり知らぬところで勝手に事件が発生し、気がつけばミステリーの世界に引き摺り込まれ、謎を解き明かすまで帰ることのできない「名探偵津田」。ここには、推理小説の登場人物になって真相を解決するマダミス(マーダーミステリー)のような、体験型の極上エンターテインメントがある。
だが───ここがこの企画の神っていることなのだが───肝心の津田が全然それに乗り気じゃない。リアル脱出ゲーム系に多少なりとも関心を持つ者なら、お金を出してでも参加したい企画なのに、津田はとにかく後ろ向き。第2弾の時には、「僕ちょっとホンマ今日あんま寝不足で。ホンマ頭回らないです。今日はホンマごめんなさい。今日はもう帰ります」と、まさかの参加拒否を宣言している(もちろん、そんなことは許されない)。
「めんどくさい」「疲れた」「腹減った」と愚痴を言いまくり、終始不機嫌顔。我々視聴者にとっては、そんな津田の一挙手一投足がツボりまくり。これだけの人気シリーズになれば、さすがに本人もやる気を出しそうなものだが、そのあたりは水ダウスタッフも心得たもの。今回の第3弾では、「ダウンタウン浜田と沖縄でギャラ1000万のCM撮影」というおいしい話をまず餌として撒いておき、それがフェイクであることをバラして精神的ショックを与えるという、悪魔のような所業をカマしている。
推理という知的労働だけではなく、起伏のある集落を何度も往復させたり、警察から逃げるために長距離を走らされたり、プールに何度も沈められたり、芸人としての汚れ仕事もキッチリさせられるから、「名探偵津田」は心身ともにかなり負担が大きいのだろう。沖縄に行く気満々だった津田が寒い新潟に行くことになり、田中のマネージャーと延々と押し問答を続けた挙句、キリっとした表情で「長袖をください」というパンチラインを繰り出せるのは、彼だからこそ。
サポート体制も完璧だ。ギリギリの精神状態に追い込まれ、キレまくる津田を助手役のみなみかわが的確にツッコみ、『水曜日のダウンタウン』パネラー陣(今田耕司、伊集院光、麒麟川島、ヒコロヒー)らがツッコみ、さらにプレゼンターのバカリズムもツッコむ。現場とスタジオに優秀な芸人を配することで、津田の天然な面白さが何倍にも増幅される仕組みになっているのだ。
しかも一見ポンコツ探偵に見える津田は、時折鋭い洞察力を発揮して、事件の真相に切り込んでいく。第2弾のときは、パネラーも含めて誰も気が付かなかった「殺害現場の不自然な点」をいち早く発見し、今回の第3弾でも被害者の遺留品から驚愕の事実を導き出す。
大袈裟なリアクション+デカ声+動物的直感力。キレ芸というカテゴライズでは同ジャンルに位置するであろうきしたかの高野も、おいでやす小田も、バイキング小峠も敵わない。「名探偵津田」は、津田の津田による津田のための神コンテンツなのである。
もうひとつ「名探偵津田」が革命的な点は、津田が現実と虚構の区別がついていないことにある。第2弾のときには「俺はどこの人?」と発言して完全に自分の世界線を見失っていたし、今回の第3弾でもその戸惑いがさらに強まっていることを告白。
彼は、名探偵津田としてふるまわなければならない虚構の世界を「1」、現実の世界を「2」と表現する。「1」と「2」がくっきりと分離されていれば本人も混乱しないのだろうが、現実世界の住人(浜田、劇団ひとり、野呂佳代 etc.)が突然虚構世界の住人としてふるまいだしたことで、パニックに陥ってしまったのだ。
麒麟川島は津田の唱える「1・2説」を聞いて「これ異世界モノだったんや」とコメント。確かにこれは、アメコミの根幹をなす多元宇宙(マルチバース)的と言ってもいいのかもしれない。スパイダーマンを例として挙げるなら、正史とされている宇宙はアース616、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』はアース96283、アンドリュー・ガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』はアース120703と、世界観の異なる多元宇宙がわかりやすくナンバリングされている。これにならえば、名探偵津田はアース1で、芸人津田はアース2ということになるだろう。
だが、本人は「2」の世界(=虚構)であっても探偵役を演じるのではなく、あくまでふだんの「1」のままで居続けている。周りが名探偵とはやしたてているだけで、津田はいつもの芸人マインドなのだ(本人も“あれは地でやっている”と発言している)。だからこそ津田は何度も「第四の壁」を突破する発言をして、虚構世界を危うい空間に変貌させてしまう。
津田が進行役のヒロインにガチ恋してしまうのも、「1」の世界を「2」として把握してしまっているから。水ダウ・スタッフもそれを見越したうえで、ヒロインに「好きです」と告白させてみたり、バックハグさせたり、あの手この手で津田の恋心を揺さぶる。ヒコロヒーは「あんなに若い女を今からいこうとしているおじさんの顔、テレビで見れない」とコメントしていたが、第4弾以降は恋愛ドキュメンタリー的な要素が強まっていくかもしれない。
「1」の世界(=虚構)を「2」の世界(=現実)の住人に見られているという(しかもそれを主人公が把握している)という構造は、映画『トゥルーマン・ショー』にも近い。ジム・キャリー主演のこの作品は、小さな島から一歩も外に出たことのない主人公が、やがて全てがテレビ番組のために作られたフェイクであることに気付く物語。現実世界だと思っていたものが実は虚構世界であり、それが多くの視聴者によって見られているという意味で、「名探偵津田」とよく似ている。
このシリーズは、「メタフィクション認知探偵もの」という新たな地平を築き上げた作品なのである。
第1弾では蓼科にあるペンション、第2弾では戸隠の集落、そして今回の第3弾では新潟の高級リゾートと、回を重ねるごとに規模がスケールアップ。みなみかわとのバディ感もますます好調だ。
広瀬すずが「おもろすぎるしぬ、、、」、山田裕貴が「ダイアン津田さんの長袖をくださいが今年一番笑ったかもしれない」とSNSで投稿するなど、有名人もトリコにする大人気コンテンツ。もちろん今後もシリーズは継続していくことだろうが、ますます警戒するであろう津田をどうダマすか、マダミスとして納得させられるだけのストーリーをどう練り上げるかを考えると、難易度は年々高まっていくだろうし、年イチ放送が限度だろう。
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の年末企画「笑ってはいけないシリーズ」が終了してしまったいま、『水曜日のダウンタウン』の「名探偵津田」は、バラエティ界の新たな希望。断言しよう。間違いなく、「名探偵津田」はゴイゴイスーなコンテンツである。
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