迷走続くマンチェスター・U ピッチ内外で一貫性皆無の今季はワースト記録満載のシーズンに
名門の没落はいつまで続くのか。マンチェスター・Uはまたしても暗く寒いトンネルの出口にたどり着くことはできなかった。
「大不幸中の幸い」。トッテナム・ホットスパーの24/25シーズンを描写するには、こんな表現がぴったりかもしれない。良い意味でも悪い意味でも、ノースロンドンの名門は歴史的なシーズンを駆け抜けた。
近年不安定だったリーグ戦での成績は大きく下振れた。開幕前の目玉補強だったドミニク・ソランケは期待には届かず、キャプテンで不動のエースのソン・フンミンも彼本来の基準を考えれば不本意なシーズンを送った。加えて、シーズン半ばには守備の柱であるクリスティアン・ロメロとミッキー・ファン・デ・フェン、GKグリエルモ・ヴィカーリオら中心選手の離脱が重なり、アーチー・グレイら本職ではない選手で固めた急造のDFラインは致命的な脆さを見せた。
その結果、12月から1月にかけて行われたリーグ戦11試合での戦績は1勝2分8敗と大きく負け越し、一時は降格も危惧される最悪の状況に陥った。その後もシーズンが深まっても改善の兆しは一切見られず、勝ち進んでいたヨーロッパリーグに備えて終盤のリーグ戦に見切りをつけた印象があったとはいえ、最後の7試合を1分6敗の勝ちなしで終えた。
これにより今季プレミアリーグでの敗戦数はクラブ史上最多の22となり、稼いだ勝ち点はわずか38にとどまった。2010-11シーズンのブラックプールやバーミンガムはこれを上回る勝ち点39で降格を経験しているという事実も、今季のスパーズの低調ぶりを際立たせる。
しかしヨーロッパの舞台では意地を見せた。言い訳のきかない背水の陣とも形容できる状況の中臨んだ、同じく未曽有の不振に喘ぐマンチェスター・Uとの決勝戦。前半終了間際に記録したブレナン・ジョンソンの虎の子の1点を守り抜き、長らく続いた無冠時代に待望の終止符を打つトロフィーを掲げた。
このタイトルはクラブの歴史において非常に大きな意味を持つと同時に、リーグ戦17位のチームが来季のチャンピオンズリーグ出場権を獲得するという稀有な事例となった。
リーグ戦では大失態をさらした一方で、悲願のタイトルを獲得して見せたアンジェ・ポステコグルー監督の進退について、フロントは決断を迫られた。結果、クラブはリーグ戦での惨状を重く受け止め、このオーストラリア人監督と袂を分かつ道を選択した。昨季似たような状況でエリック・テン・ハフ監督の続投に踏み切ったマンチェスター・Uのその後の迷走も、この決断において反面教師的な役割を担ったかもしれない。一部選手からは不満の声も上がる人事だったものの、後任にはブレントフォードで指揮を執っていたトーマス・フランクを選出した。
来季に向けた追い風もある。この監督人事によってブレントフォードで師弟関係を築いていたブライアン・エンベウモ獲得のうわさが突如として浮上。彼に限らず、選手にとってチャンピオンズリーグでプレーできる点は移籍に一考の余地を与える大きな魅力となるだろう。
今季のパフォーマンスを考慮すれば、これらの結果は考えうる限り最高のものだったと捉えることもできる。前代未聞の不調を経験しながらもプレミアリーグからの降格は免れ、さらに来季は欧州最高峰の舞台で戦う権利も得た。再起を誓うクラブにとってそれに相応しい舞台が整った中、デンマーク人指揮官がその手腕を余すことなく発揮できるかに注目が集まる。
名門の没落はいつまで続くのか。マンチェスター・Uはまたしても暗く寒いトンネルの出口にたどり着くことはできなかった。
最終節終了後のピッチには歓喜の輪が広がった。名門にとって本来目指すべき場所にはまだ及ばない。それでも今季のチェルシーには来季に向けた期待が高まるような復活の兆しが確かにあった。
誰も予想だにしない失意のシーズンとなった。前年度王者が陥った極度の不振は、例年以上に波乱の多かった今季の中でも特に大きなサプライズのひとつに数えていいだろう。
悲願のタイトルにはまた一歩届かなかった。プレミアリーグを3シーズン連続の2位で終えたアーセナルの成績は決して非難の対象となるものではない。しかしながらノースロンドンの名門にとって、過去3シーズンの中で優勝から最も遠い2位だった事実は否定できない。
競争力の高いプレミアリーグにおいて、シーズンを通して高いレベルで一貫性をキープすることは容易ではない。その意味で今季のリヴァプールのパフォーマンスは過去数シーズンの中でも傑出したものだったことがわかる。