若き知将と才能の融合 ブライトン新時代の胎動
中堅クラブとしての躍進を魅せたブライトンだが、いまだ欧州の舞台には一歩及ばなかった。成熟した戦術と若手の台頭によって過去最高を目指した今季は、期待と現実の間で揺れ動く旅となった。
ボーンマスは確実に成長を続けている。2019-20シーズン、わずかに勝ち点1が足りずに降格の憂き目にあったクラブは、それから2シーズンをチャンピオンシップで過ごした。プレミアリーグに復帰した22-23シーズンからは15位、12位と順位を上げ、今季はトップハーフとなる9位でリーグ戦を終えた。着実に力をつける南海岸の小クラブは、もはや並み居る強豪にとっても脅威となりうる存在だ。
12という得失点差は来季の欧州大会出場権を獲得したチーム以外ではベストの数字となった。得点58、失点46というまったく同じ内訳だったノッティンガム・フォレストが惜しくもチャンピオンズリーグ出場権獲得を逃した事実を踏まえれば、ボーンマスが秘める可能性には自然と注目が集まる。
今季は特に、下馬評を覆す番狂わせを多く演じた。開幕7試合は2勝2分3敗と負け越したものの、第8節アーセナル戦での大金星から空気が変わった。その後もマンチェスター・Cやトッテナム・ホットスパー、マンチェスター・Uやニューカッスル、さらには今季躍進を見せたノッティンガム・フォレストら相手に勝利を重ね、ボーンマスの大物食いは今季の象徴的なトピックのひとつとなった。
さらに特筆すべきは、「妥当な勝利」と形容できる内容の試合が多かった点だ。格上相手にはボールを持たれる時間も長くなったが、リスペクトをもって堅守速攻という自分たちのスタイルを徹底して貫いた。ディーン・ハイセンやジャスティン・クライフェルト、アントワン・セメンヨなど、各ポジションにとって肝となる選手を中心に展開する縦に早いフットボールは、格上相手により効果的な威力を発揮した。
スタッツを見れば、セメンヨとクライフェルトがチームトップの13ゴールを記録。次いで新加入のエヴァニウソンは12ゴールと初年度からプレミアリーグの水になじみ、23歳のダンゴ・ワッタラも9ゴールを挙げた。絶対的な存在に依存せず得点源を分散させることで相手に的を絞らせなかった攻撃陣は、ボーンマスの躍進の大きな要因となった。
一方で、プラスの収穫が目立ったシーズンを終え移籍市場が開いた今、ボーンマスには中堅クラブの宿命とも言える懸念が色濃く浮かび上がる。今季大ブレイクを果たしたDFハイセンはすでにスペインの名門レアル・マドリーに引き抜かれ、無尽蔵のスタミナを武器に攻守に躍動したミロシュ・ケルケズのリヴァプールへの移籍も秒読み段階。同じくシーズンを通して強固なディフェンス陣を支えたイリア・ザバルニーも欧州王者パリ・サンジェルマンからアプローチを受けている。
主力の流出を乗り越えさらなる飛躍の足がかりを掴めるかどうか。大エースだったドミニク・ソランキの退団を乗り越えたボーンマスには、逆境も跳ね返す明るい未来を期待したい。
中堅クラブとしての躍進を魅せたブライトンだが、いまだ欧州の舞台には一歩及ばなかった。成熟した戦術と若手の台頭によって過去最高を目指した今季は、期待と現実の間で揺れ動く旅となった。
数々の波乱により例年に増して激しい競争が見られた24/25シーズンのプレミアリーグ。その中でも最も大きなサプライズとして、ノッティンガム・フォレストの名前を思い浮かべる人は少なくないはずだ。
近年上位勢を脅かし続ける2チーム。ニューカッスルとアストン・ヴィラを分けたのはわずかに得失点差だった。
「大不幸中の幸い」。トッテナム・ホットスパーの24/25シーズンを描写するには、こんな表現がぴったりかもしれない。良い意味でも悪い意味でも、ノースロンドンの名門は歴史的なシーズンを駆け抜けた。
名門の没落はいつまで続くのか。マンチェスター・Uはまたしても暗く寒いトンネルの出口にたどり着くことはできなかった。