Hi-Fi Un!corn『FANTASIA』インタビュー――この1年で大きく成長した5人が完成させた『FANTASIA』
『THE IDOL BAND︓BOY'S BATTLE』で⾒事優勝を果たしたHi-Fi Un!corn(ハイ・ファイ・ユニコーン)が待望の1st ALBUM『FANTASIA』をリリース。そんな彼らの魅力に迫ります!
京(DIR EN GREY)、yukihiro(L'Arc-en-Ciel)、ミヤ(MUCC)、antz(Tokyo Shoegazer)、高松浩史(The Novembers)からなる5人組ロックバンドPetit Brabancon。
それぞれのバンドで長いキャリアと実績を持つ彼らは、90年代のニューメタルを軸にしたヘヴィな世界観に、善悪、喜怒哀楽、愛など多様な感情を様々な視点から描いた歌詩と卓越したクリエティビティで、5人それぞれの個性が鋭く止めどなく襲いかかる楽曲を展開しています。
1月28日(土)に豊洲PITで開催された『Petit Brabancon EXPLODE -01-』が特別編集版として配信されるにあたり、バンドの発起人であり作詩を手掛けている京さんにインタビューを行いました。初のツアーを経て、さらに激しくなっていくだろうバンドの今後についても語ってくださいました。
——1月28日に豊洲PITで開催されたライヴが配信されることになりました。特に印象に残っていることを教えてください。
京:記憶がどんどん上書きされていくのであまり覚えてないんですけど(笑)、けっこう大きめなハコでのワンマンだったので、もうちょっとこう、一体感が欲しかったなぁみたいな感じはしますけど。(当時は)声出しちゃダメとか、色々あったじゃないですか。だから仕方ないなと思いつつ、もったいないなっていう気持ちはありましたね。
——去年の秋から初のツアーが始まって、すこし時間が空いてから豊洲PITでのライヴでしたね。
京:そうですね。とりあえずアルバムの締めのライヴじゃないですか。アルバムが出てからライヴもそんなにやっていないので、ちょっと早いなぁと思ってました。あと10~20本くらいやってから豊洲PITだったらどうだったんだろうなぁみたいな感じはありますね。
——やっぱりライヴをやらないと分からないことがたくさんあるっていう。
京:そうですね、ありますね。元々Petit Brabanconを組んだ時はコロナもなかったので、お客さんはこういうノリだろうなとか、こういう盛り上がりをするだろうなっていうイメージで組んでいたんですよ。それが一切封印された状態でのライヴだったので、その噛み合わなさがちょっと、歯がゆいなっていうのはありました。
——目に見える反応がないんでしょうか。
京:うーん、全くないわけではないんですけど、イメージとはだいぶかけ離れていたので。あとはアルバムを出して、ツアーをやったのが5本くらいだったかな。ちょうど良い感じになってきたなっていう時にツアーが終わっちゃって。それでちょっと間が空いて豊洲だったので、またイチに戻った感じがして。
——ああ、なるほど。
京:それを言っても仕方ないですけど、ちょっと残念でしたね。声が多少枯れようが、ツアーの最終日の次の日にもう1回ライヴやってもよかったなと。ただ初めて見る人からしたら、こんな感じのバンドなんだっていうのは何となく分かると思います。今の段階で、映像での名刺代わりにはなったかなという感じですね。メンバー個々にいろいろあると思うんですけど、ライヴ感は伝わる映像はできたと思うので、それだけでも感じてもらえるかなとは思います。
——荒編集の映像を見ましたけど、すごいかっこいい映像になってました。
京:いやぁもっともっとイケたんじゃないですか(笑)。
——もっとイケるというのは演奏がですか?
京:いや僕、演奏とかは全くわからないんですよ。よっぽどずれてるとか、音が抜けてるとかでないと全然気にならないので。音がどうかとかはわからないけど、自分の中でのテンションとか、世界観の作り方とか、ライヴの持っていき方とかがもうちょっとイケたやろ?っていうのは、見て思いましたね。
——もう十分に他にないPetit Brabanconだけの世界ができているっていう印象でしたけど、まだまだだと。
京:うん、全然。いや、全然ではないけど…僕の頭の中にある理想からは、まだまだかけ離れていましたね。
——京さんにしてみれば、例えばDIR EN GREYとかsukekiyoとかとは全く違う世界をPetit Brabanconでは目指しているけど、まだそれは達成できてないということなんでしょうか?
京:そうですね。やっている人間は一緒ですけど、メンバーが違うだけで全然違うって感じられるんです。ただ聴いている側って、そんなに(違いは)わからないかもしれないなっていうのはありますよね。
——ステージ上の振る舞いは、普段の京さんだなと思いながら見ていました。
京:そう。だから、ステージング一緒やん、歌い方一緒やんって言われたら、そりゃ一緒の人間なんで、って思うんですけど(笑)。
——確かに(笑)。
京:完全に分けるとかは意識していないですけど、自然体でいたいなっていうのはあって。Petit Brabanconのメンバーでライヴをすること自体が僕の中ですごく新鮮なので、さらにそこから今までにやったことないものを作れるのが一番ベストだなって思っているので。
——他のバンドでやっている時と違う感覚を、もうちょっと詳しく話していただけますか。
京:メンバーが違うと楽曲も違いますしステージも全然違うじゃないですか。ライヴの流れも違うし。そうなってくると、表現の仕方とかその時の空気感とか曲の持っている世界観も、自然と変わってくると思うんですよね。僕は決めたことをそのままやる人間じゃないので、そういうことにすごく影響されるし、自然とそこに乗っかることになる。自分は自分、みたいな感じで突き通すのではなくて、バンドに合った自分の感覚を素直に出しているだけなので。だから違うバンドをやっていたら、自ずと自分の出すものも違ってくると僕は感じるんですけどね。
——以前、歌詩の世界などは、これまでご自身が描いてきた世界と共通項が多いということをおっしゃっていたと思うんですが、Petit Brabanconじゃなければ出てこない京さんは、どういうものなんでしょうか?
京:DIR EN GREYでもちょこちょこは出てくるんですけど……何っていったらいいんですかね、凶暴性とか破壊性とか自虐性とか反発心とか、そこだけにぎゅっと凝縮したバンドがPetit Brabanconの歌詩の世界観の中にはあるので、そこが違うかなと思います。
——それはやっぱり他のメンバーがいるからこそ引き出されるものであると?
京:そうですね。楽曲だったりバンド全体が目指している何となくのバンド像をそういう方向で組んでいるので。
——そういう他のバンドとは違う世界を目指しているからこそ、まだまだイケるという手応えがあるということですね。
京:うん、まだ出し足りないなっていう気はしますね。
——京さんの表現しようとしている世界をメンバーの皆さんがバックアップして、それがPetit Brabanconになっているという印象もあります。
京:どうなんですかね。歌詩も(メンバーに)見せないし。完成してメンバーがコーラスを取る時に僕の歌詩を見て、こんなこと歌ってるの?って初めて気が付くぐらいなんで(笑)。こういうテーマで歌うからっていう話も一切しないので。
——言葉にしなくても自ずと伝わる部分というのがありそうですね。
京:なんですかね。逆に、伝わらなくても面白いかなとは思うんですよね。逆でも全然。そこで僕が真逆のことを歌っていても面白いと思うし。
——そういう衝突や齟齬が逆に面白い。
京:それがこのバンドに合うかどうかは置いておいて(笑)。そもそもPetit Brabanconって歌詩を出していないんですよ、ほぼ。歌詩カードないし、ワンフレーズだけちょっと載せていたり。ライヴの映像にちょっと流れていたりするくらいなので。だから、みんな歌詩がわからない。感じたままに聴いてもらいたいなと。
——歌詩を出さないのはどういう理由なんですか?
京:歌詩を伝えたいバンドではないから。感覚的に聴いてほしかったんですよね、僕の中で。DIR EN GREYもsukekiyoも歌詩を出しているんですけど、Petit Brabanconって自分が洋楽を聴いている時、何を言っているのかわからないけどかっこいいな!とか、その感覚で聴いてほしかったので。だからあえて歌詩も載せていないし、ハッキリ発音していなかったりするんですよ。日本語に聞こえないように歌っていたりとか、あえて崩して歌っているので。本当に感覚的に聴いてほしいし、感じてほしいバンドだなっていうのはありますね。
——歌詩を細かく解釈するような、そういう風な聞き方じゃなくて。
京:パンク・バンドってメッセージ性じゃないですか。自分はこう思ってる、みたいな。でも、もっとハードコア的っていうか、どう思われようが別にどうでもいい、に近いので。別に歌詩とか理解されなくてもいいや、みたいな。
——DIR EN GREYやsukekiyoに比べて、(Petit Brabanconは)そういう気分が強いんでしょうか?
京:そうですね。
——そういう方向性をバンドで共有していると。
京:僕が持っている世界観にみんながプラスアルファしていく感じではなくて、みんなが向かっている方向が一緒、みたいな感じはします。ファースト・アルバムを作りライヴを何本か重ねて、Petit Brabanconというものがメンバーの中でだんだん形になってきたんじゃないですかね。僕ももちろんそうですし。
——それは言葉にしないでも、演奏を通じて、だんだんわかりあってくるんでしょうか?
京:だと思います。そうすると、こういうこともやってみたいなと思うし。新しいことに挑戦したいなっていう気持ちも出てくる。
——まだライヴの本数自体はそんなに多くはないですが、本数を重ねれば重なるほどだんだん世界ができあがってくる。
京:本当はワンツアーで20本くらいしたいんですけど、みんな本当に忙しいので。
——ライヴで世界観を作り上げていく方法論は京さんにとっては基本中の基本というか、どんなバンドであれどんなユニットであれ変わらないっていうことなんですね。
京:そうですね。音を作っても、その曲の7割くらいしか完成していない感じなんですよね。ライヴを重ねることで、それを100%に近づけていくみたいな。1本やるごとに曲は変わっていくし、イメージも変わっていくし、成長していくと思っているので。やっぱりライヴは重ねたいですよね。
——なるほど。
京:たぶん(配信で)見てもらったら、実際のライヴはこういう感じの世界をお客さんと一体になってやるバンドなんだろうなっていうのはわかると思うので。次のライヴからは声出しも全然OKだし、興味を持ったら来てもらえたら良いかなと思います。
——今後のPetit Brabanconはどんな風になりそうですか?
京:そうですね…普通のバンドと逆行して、どんどん激しくなるんじゃないですか、いろんな意味で(笑)。音的に激しくとか、いろんな面があると思うんですけど、なんか激しくなりそう。メンバー間も、よりカチッとしてくるだろうし、それでファンの子のパワー感も出るじゃないですか。そうなるとバンドのパワーもより上がってくるので。一体感が増して凶悪さが増すんじゃないですかね。
——いいですね。今よりもさらに激しくなる。
京:うん。なってほしいなと思っています。このバンドは長くやりたいと思いますけど、いつ終わったとしてもスッキリできるくらいの爆発をずっと続けたいというか。常にそういう覚悟でやってます。
始動開始から1年、2023年1月28日東京・豊洲PITにて開催された狂気の夜!
凄まじい轟音と熱気が蠢く狂気の夜、”狂犬”は進化を遂げ”モンスター”となって噛み付いた。バンドが突き進む未来への可能性が爆発する瞬間を体験できる作品。
【セットリスト】「Isolated spiral」、「Ruin of Existence」、「渇き」、「come to a screaming halt」、「刻」、「非人間、独白に在らず」、「I kill myself」、「Don't forget」
Petit Brabancon・ミヤさんのインタビューはこちら
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