「1秒速く考え、1秒速く動く」マンチェスター・Cの心臓ロドリの攻守を、フランク・ランパードと紐解く
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「1秒速く考え、1秒速く動く」マンチェスター・Cの心臓ロドリの攻守を、フランク・ランパードと紐解く

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2024年10月、スペイン人選手として64年ぶりとなるバロンドールを受賞したマンチェスター・Cのロドリ。フットボール選手として最高の栄誉を手にした一方で、2024-25シーズンは右ひざ前十字じん帯断裂という大怪我の影響で、ほとんどの時間をピッチ外で過ごすことになった。

今回お届けするのは、そんな彼がバロンドール受賞直前の2024年9月に応じたインタビューである。プレミアリーグのレジェンドであり、同じく中盤の選手だったフランク・ランパードが聞き手となり、知られざる素顔や価値観、巧みなプレーの裏にある考えを紐解いていく。このインタビューを読めば、試練を乗り越えピッチへ帰還したロドリのプレーが、あなたの目により興味深く映るに違いない。

「文化や育つ過程での手本が、自分のプレースタイルを形作る」

──本日はありがとうございます、ロドリ。あなたのキャリアの始まりから現在地、そしてもちろん、あなたのプレー、特に中盤でのプレーについて深く聞ければと思っています。

ロドリ:ええ、もちろんです。

──最近、あなたの発言に注目が集まっています。メディアに多くを語るタイプではない印象ですが。

ロドリ:そうですね。正直なところ、メディアで多くを発言するというよりは、こうしてフットボールや人生について語り合うのが好きなんです。最初の頃は英語も今ほどではなかったので、難しかったのですが(笑)。

──あなたのストーリーは、他の多くの選手とは少し違うと感じます。アメリカでのキャンプや、大学に通って勉強していた時期があったと聞きました。非常に興味深い経歴です。

ロドリ:ええ、僕が持っている価値観を幼い頃から植え付けてくれたのは家族でした。本当に幸運だったと思っています。

もちろん、プロのフットボーラーになれれば、それで生きていけるとは思っていました。ただ僕にとっての第一の選択肢は常に、勉強して将来を築くことでした。プロを目指す多くの子どもたちがその重要性を理解していないかもしれませんが、プロになれない選手が大多数だという事実だけでなく、たとえプロになれたとしても、学んだ経験は非常に役立つものなんです。

たとえば、物事を別の角度から理解したり、視覚化したりする能力は非常に助けになります。学ぶことは、常に地に足をつけて過ごすことにもつながるんです。

ロドリ 1

──プロになるという道筋が明確になったのはいつ頃でしたか?「自分はこの道に進むんだ」と確信した瞬間は?

ロドリ:正直に言うと、常にその夢を追いかけていました。勉強しなければならないとわかっていましたが、父の影響もあり、僕の人生はフットボールが中心でした。ピッチでプレーしている選手たちを見て、「フットボールをしている時、僕は生きていると感じる。だからこれをやりたいんだ」と思っていましたから。

偉大な選手になるためには、多くのことを犠牲にしなければなりません。10代の頃の楽しみとか、そういったものですね。何かを犠牲にしなければ、何かを達成することはできませんから。

──特に16歳、17歳頃が重要かもしれません。

ロドリ:ええ。その年齢まで何をしてきたかも重要ですが、そこから先はフィジカルの発達など、多くの要素に左右されるので、本当の意味でどうなるかはわかりません。僕はその頃、アトレティコ(・デ・マドリー)を出て、信頼してくれたビジャレアルに移籍しました。それがセグンダ(2部)、そしてプリメーラ(1部)でのプロとしての第一歩でした。そこからはごく自然な流れでしたね。

ロドリ

──若い頃から、今のようなプレースタイルだったのですか?

ロドリ:必ずしもそうではありません。フィジカルの発達が非常に遅かったので。15歳から17歳くらいの頃は、とても小さくて細かったんです。

でも、役割としては常に今のようなポジションでした。年齢によっては8番(インサイドハーフ)や10番(トップ下)でプレーすることもありましたが、自分のベストな役割は6番(アンカー)だと常に考えていました。自分の特性やフットボールの理解の仕方、そして僕は足が速い選手ではないので、多くのことを考慮すると、このポジションが最適なんです。

──スペインで育ったことで、お手本にした選手も影響しているのでしょうか?セルヒオ・ブスケツのような?

ロドリ:ええ、その通りです。僕にとってのお手本はブスケツやシャビ、イニエスタでした。彼らは、よりボールを保持し、試合をコントロールするタイプの選手です。もし僕がイングランド人だったら、あなた(ランパード)やスコールズのような選手を見ていたかもしれません。僕たちが持つ文化や、育つ過程での手本が、自分のプレースタイルを形作っていくのだと思います。

──プレミアリーグに来ることは、以前から考えていたのですか?そして、実際に来てみて、プレーに違いは感じましたか?

ロドリ:シティがどのようなパフォーマンスを見せているか、そしてリーグがいかに成長しているかは見ていました。僕たちは常にイングランドのフットボール、スタジアムの雰囲気、ファン、そして彼らのフットボールへの理解に憧れを抱いていました。だから、オファーが来た時は即決でしたね。新しい経験ですし、自分自身を適応させなければならない、大きな挑戦でした。

──プレースタイルの違いについてはいかがでしょう。スペインの選手はピッチを広く使う印象があります。

ロドリ:その通りだと思います。もしピッチを狭く使ってしまうと、フィジカル的な要素が強くなり、自分たちのプレーを表現するのが難しくなりますからね。だから僕たちスペインの選手は、自分でスペースを作りながらプレーする必要があります。

「スキャニングは“1秒”を与えてくれる」

──映像を見ながらお聞きします。これはチェルシー戦ですが、あなたはセンターバックのような位置でプレーしていますね。

ロドリ:ええ、そうでしたね。

──中盤から一列下がってプレーするのは、私には考えられません。この場面であなたは背後のスペースを警戒していますが、これはもう自然な、本能のようなものですか?

ロドリ:ええ、本能的なものです。多くの選手はデュエルやバトルが最も重要だと考えがちです。ですが、もし相手より1秒速く考え、1秒速く行動できれば、自分が先にボールを触れるんです。

この場面も、走っている相手より、僕の方が足が速いわけではありません。ただ、ボールがそこに来るだろうと予測して、1秒速く動き出しただけです。ペップ(・グアルディオラ監督)から「センターバックでプレーして、ボールを持ったら中盤に動けるか?」と聞かれたのを覚えています。

ロドリ

──次のクリップはクロス対応の場面です。多くの中盤選手は、もっとゴール前に下がってカバーしようと考えがちですが、あなたはペナルティアーク付近でポジションを取っています。

ロドリ:これは面白いですね(笑)。コーチたちから常に「ペナルティスポット、ペナルティスポット」と言われ続けてきたことなんです。ボールがエリア内に入ってきたら、常にペナルティスポットに到達しろ、と。ボールのライン上にいるだけでは不十分で、相手より速く走り、そのスポットに到達しなければならないんです。

──そして、このデュエルの場面。ボールを奪うだけでなく、その後のパスが素晴らしい。ハイレベルなチームは常にカウンタープレスを狙っていますが、あなたは冷静に時間を作り、決定的なパスを出しています。これは自信の表れですか?

ロドリ:パスはただ出すだけでは意味がありません。パスには意味がなければならないのです。そして、チームにとって最も価値のあるパスは、相手の守備ラインをブレイクするパスです。

僕たちが単調にパスを回しているように見える時、それは相手を動かし、内側のスペースを見つけるための作業なんです。この場面でも、ボールを奪ってから簡単なパスで安全にプレーすることもできました。ですが、あえてラインをブレイクするパスを選んだことで、結果的にカウンターのチャンスが生まれたんです。

ロドリ

──あなたのプレーを見ていて最も素晴らしいと感じるのは、ボールを持った時に試合のテンポをコントロールする部分です。攻撃面での進化をどう感じていますか?

ロドリ:僕たちはボールを70%も保持できる素晴らしいチームにいますから、ボールを持った時に何をするか、という部分を磨くことができます。守備に追われてばかりでは、その時間はありませんからね。

アタッキングサードへの関与は、より重要になっていると感じます。多くのチームが自陣のボックス内で守りを固めると、ボールは僕のところに戻ってきます。そこで僕が何をするか、みんなが見ているんです。このチームでは責任を持って前方でプレーし、裏へのチップキックやショートパス、ロングパスを使い分けることが求められていると感じます。

──その判断力はどのように磨いているのですか?

ロドリ:常に自分の試合を見返して分析し、改善しようとしています。より大きな視点で見ることで、見えていなかったスペースが見えてきますから。面白いもので、タブレットで自分のプレーを見ると、「なんてひどいんだ」と思うことがありますよ(笑)。簡単に見えるんです。でもピッチ上では難しい。

──これも素晴らしいパスですね。カイル・ウォーカーの動きを完全に理解している。

ロドリ:ええ、お互いを理解することは非常に大きな部分を占めます。リヤド・マフレズがここにいた時もそうでした。彼は僕を見ていないし、僕も彼を見ていない。それでも、パスがそこに行くとわかっているし、彼もそこにいるんです。

ロドリ

──このクリップは、まさにあなたの“スキャニング”の重要性を示しています。何度も首を振り、情報を得てから、一気にラインをブレイクするパスを出していますね。

ロドリ:ミッドフィルダーは常に選手たちに囲まれていますからね。スキャニングは、ボールを持った時に何をするかを決めるための“1秒”を与えてくれます。重要なのは、ボランチは常に相手ストライカーの背後にポジションを取ることです。同じライン上にいてはダメなんです。相手の背後にいれば、相手は状況を把握しにくくなりますから。

「バロンドールの候補になった、それだけで信じがたい」

──重要なゴールも数多く決めてきました。特に、このアストン・ヴィラ戦のゴールは劇的でしたね。

ロドリ:この日のことは信じられないくらい鮮明に覚えています。0-2でリードされ、ハーフタイムのスピーチ、すべてが特別でした。スターリングとギュンドアンが投入されて流れが変わり、僕たちは「行けるぞ!」という雰囲気になりました。ジンチェンコからボールが来た時、相手はクロスを警戒して下がっていました。難しいボールだったので、最初はファーポストに流し込もうかと考えましたが、あまりに難しい。それで、「よし、トニ・クロースのようなパスだ」と(笑)。ニアポストに強く打とうと決めました。

──一瞬でそれだけの思考プロセスを経ているのですね。

ロドリ:ええ。彼がドリブルしている間に、ボールが自分に来るとわかっていたので、どうするかを考えていました。

ロドリ

──あなたは素晴らしいシーズンを送り、スペイン代表としてもネーションズリーグで優勝、大会MVPに輝きました。そして、バロンドールの有力候補と目されています。守備的な選手がこの賞を受賞するのは稀ですが、どう感じていますか?

ロドリ:家族と「今、自分たちがどこにいるのか」という話をするだけで、信じられない気持ちになります。僕がバロンドールの候補として語られている。その事実だけで、信じがたいことです。僕を信じ、僕のプレーを見て楽しんでくれる人々に、心から感謝しています。

──スペイン人選手の受賞は、1960年のルイス・スアレス以来ありません。シャビやイニエスタでさえも。

ロドリ:スペインはバロンドールに値する国だと思います。僕個人の意見ではなく、一般論としてです。僕たちが築き上げてきたフットボール、輩出してきた選手たちを考えれば、受賞に値するはずです。

もちろん、この賞がゴールを決める選手に注目が集まりやすいことは理解しています。でも、ミッドフィルダーやセンターバックの役割を楽しんでくれる人がたくさんいることを、僕は本当に嬉しく思っています。彼らも試合にとって重要で、タイトルを勝ち取ることができるのですから。

ロドリ

──最後に、改めてバロンドールへの思いを聞かせてください。

ロドリ:個人賞はもちろん嬉しいですが、フットボールをプレーするのはチームとして勝利するためです。個人賞はその働きに対する結果に過ぎません。どんな結果になろうとも、あのセレモニーの場にいられるだけで素晴らしいことです。他の選手たちにも大きなリスペクトを抱いていますし、彼らも受賞に値します。どうなるか、見守りたいと思います。

──今日は本当にありがとうございました。

ロドリ:こちらこそ、ありがとうございました。

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