超満員の“聖地”後楽園ホールで開催された第71回全日本新人王決定戦。東日本新人王トーナメントを制した東軍代表と、西日本・中日本・西部日本新人王トーナメントを制した西軍代表が、日本一をかけて激突する!
昨年は、東軍の5勝、西軍の7勝だった。果たして今年の結果は!
本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!
東日本新人王の吉野健二は、試合開始と同時に頭を付けたバチバチの打撃戦を好むファイター。激しい肉弾戦となった伊吹遼平との2連戦を制した勢いそのままに、決勝で盛合竜也を下し悲願の東日本王者となった。
西日本新人王の永田雅樹は、勝っても負けてもKO必至という、激闘スタイルのファイター。打ちつ打たれつの乱打戦は望むところ、先手を取って一気に畳み掛け、左右フックを先に当てたい。
試合開始のゴングが鳴ったら、まばたき厳禁!フルスロットルでの肉弾戦に後楽園ホールが沸いた!
試合は、1回から駆け引きなしの打ち合いに!吉野が、鋭い右ボディで奇襲攻撃!一気に距離を詰めると、永田の左フックに連打を叩き込み、わずか10秒あまりで永田からダウンを奪う!再開後も吉野は、抉るようなボディで永田の動きを止めると右フックを痛打!大きくグラつく永田に、追い打ちとなる2発目の右フックがクリーンヒット!永田は、前のめりに倒れ込み、その瞬間にレフェリーは試合を止めた!強烈なTKOで、吉野が勝利をもぎ取った!
永田雅樹選手、正々堂々と打ち合い、華々しく散った。勝っても負けてもKOという選手だからこそ、全日本決勝まで昇りつめたに違いない。最後まで勇敢だった!
吉野健二選手、この大会を締めくくるにあたって、これ以上ない豪快なTKOだった!2年のブランクから戻って来て4連勝負けなし。破竹の勢いは止まらない!
東日本新人王の福永啄巳は、フットワークと左リードジャブで試合を組み立て、ポイントを積み重ねるアウトボクシングが主体のボクサーファイター。優勝候補だった金子佳樹を撃破し勢いに乗る。
西日本新人王・西軍技能賞の住田琉斗は、長身から繰り出す左リードジャブで突き放し、鋭い右ストレートを狙い撃ちするヒットマンスタイルのボクサーファイター。
ジャブの差し合いが勝敗の鍵!注目の東西ジャバー対決を制するのは誰だ⁉
試合は1回から大きく動く!長身の住田が放った、長い右クロスが福永の顔面にクリーンヒット!福永が棒立ちになったところで住田が連打し、福永から早々とダウンを奪う!住田は、オープニングヒットのチャンスをものにした。
2回、住田のジャブが勢いを増す。そのジャブでボディも叩き、優勢に試合を進める。福永は時折左フックをヒットさせるが、いかんせん単発に終わる。
3回、突破口を見出したい福永は、ガードを固めて接近し、ボディから顔面へ振り回すようなパンチで攻め込む。しかし、住田はバックステップとクリンチで福永の攻撃をいなすと、再び右ストレートでグラつかせる。
4回、劣勢を挽回しようとボクシングが粗くなってきた福永を、住田はアウトボクシングでコントロール。
最終5回、住田はアウトボクシングで打つだけ打ったら、クリンチで福永の追撃を封じ込める試合巧者ぶりを見せる。しかも、シャープなワンツーで福永の左目をカットするなど、主導権を渡さなかった。判定は0-3で住田が勝利!大差が付いた判定だった。
福永啄巳選手、初回のオープニングヒットが、最後まで影響してしまった。本来のジャブでペースを掴むボクシングを遂行できなかった。
住田琉斗選手、長身を活かしながら、相手の長所を消すようなクレバーなボクシングがハマった試合。随所に見られた右ストレートも効果的だった!
東日本新人王のシャオリン孝司は、元K-1ファイターからボクシングに転向。プレッシャーをかけて接近し、ボディから崩して顔面に左右フックを返すファイター。
西日本新人王の田下翔太は、軽快なフットワークと抜群のハンドスピードでカウンターを合わせるサウスポーのボクサーファイター。相手の攻撃を空転させるテクニックも持つ。
異種格闘技で培った実践的ファイトスタイルと、アマチュアで経験を積んだ完成度の高いボクシングが、ここに激突!
試合は1回、シャオリンがカードを固めて、ジワジワとプレッシャーをかけ、右ストレートを捻じりこむ。サウスポーの田下は、右に回りながら前手の右ジャブ、右アッパーで応戦したが、シャリオンの気迫に押され気味だった。
しかし2回、田下が右にサイドステップし、ポジションを変えると同時に引っ掛けた右フックで、シャオリンがダウン!シャオリンは、スリップを主張しダメージがない事をアピールするが、キャンバスにグローブを付けてしまったので、ダウンの裁定は免れない。その後、ダウンを挽回しようとシャオリンの圧力はこれまで以上に増すが、田下は多彩なパンチで跳ね返す。
そして3回、田下は、接近してビッグパンチを当てようとするシャオリンの大振りをL字ガードとボディワークでかわす。そして、シャオリンのガードの隙間を内側からアッパー、外からはフックを的中させてゆく。「効いてないよ」とばかりに舌を出すシャオリン。気持ちの強さの表れとも取れるが、こういったパフォーマンスこそ苦しい状態の裏返しだったりする。そしてKOシーンは唐突にやって来る!田下は、シャオリンの打ち終わりに右アッパーを突き上げ顔面を弾くと、間髪入れずに左ストレートを打ち抜く!シャオリンは、スローモーションのように、ゆっくりと崩れ落ちた。常に冷静にガードの間を狙い打ちしていた、田下がTKOで勝利した!
シャオリン孝司選手、フィジカルの強さを活かしたアグレッシブなファイトスタイルは、格闘家ならではの迫力だった!
田下翔太選手、スピード良し、バランス良し、フットワーク良し、的中率良しと隙の無い完成度を披露した!倒せる技巧派サウスポーとして活躍する姿が目に浮かぶ!
東日本新人王・技能賞の本多俊介は、182㎝の長身から繰り出すジャブと打ち下ろしの右ストレートで、これまで7戦全勝の右ボクサータイプだが、接近しても強打を打ち込める。
西部日本新人王の堤啓至は、右リードジャブで距離を測りながら、左ストレートを巧打するサウスポーのアウトボクサー。中間距離で打たせずに打つボクシングが信条。
右と左の違いはあるけれど、東西技巧派ボクサー同士の対決!高度な技術戦を制するのは⁉
試合は1回、長身の本多が、前後にステップを踏みながら長いワンツーでプレッシャーをかける。堤は、リズムを作りながら右フックを振るうが、本多のガードにも届かない。ましてや左ストレートは、懐の深い本多には届きそうにない。そう思っていた矢先、堤のダッキングから伸び上がるような右フックが、本多のテンプルにヒット!思い切った踏み込みで、距離を縮めた。
2回、堤は、前のラウンドでヒットした右フックをリードパンチにし、本多の周りをサークリング。距離を感じさせない、良いリズムで試合を進める。しかし本多は、冷静に堤のボディを叩き続ける。そのボディ攻撃は執拗で、特に接近しての左ボディは強烈!みうみる堤の背中が丸まってくる。途中、ローブローでの休憩を挟んだが、ペースは本多が握り返した。
そして3回、本多はギアを上げ、より力を込めた強いパンチでプレッシャーをかける。堤は下がりながらも右フックで応戦するが、本多の左フックがヒット!コンパクトに振りぬいたこのパンチで、堤はダウン!たっぷり時間を使って立ち上がり試合再開。しかし、本多の詰めは鋭く、左ストレートでロープに弾き飛ばすと、右アッパーを付き上げ、左フックを畳み掛ける!堤は、たまらず座り込み、ここで試合終了!本多がTKO勝利した!
堤啓至選手、右フックを打ち込むことは出来たが、得意の左ストレートまで繋げることが出来なかった。
本多俊介選手、長身にもかかわらず、アウトボックスに頼らずに、積極的に打ちに行くところがボクシングファンを熱くする!上手さと強さを兼ね備えた逸材だ!
東日本新人王・敢闘賞の梶野翔太は、右ストレートを上下に打ち分け、ポイントを集める技巧派ボクサーだが、ダウンを奪うタイミングも持っている。元トップアマからプロ仕様に進化中。
西日本新人王・MVPの瀬川欧太郎は、持ち前のフィジカルの強さを活かした荒々しいボクシングが特徴的なファイター。乱打戦に巻き込む必勝パターンに持ち込みたい。
元トップアマの技巧派ボクサーが、技巧派ボクサーを封じ込めて勝ちあがってきたファイターと対決する!まるで天敵同士のような組み合わせ!勝つのはどっちだ!
試合は1回からバチバチの打ち合いになる!瀬川は頭をつけての接近戦で指導権を握ろうとするが、梶野も真っ向から打ち合いに応じ、瀬川のお株を奪う戦いぶり。ほぼ互角の内容だが、的中率では梶野が上回ったか。
2回、頭をつけた打ち合いが続く!実際、頭がゴツゴツ当たりながらの乱打戦。この展開は、瀬川が望んだもので、試合を有利に進めるのかと思いきや、梶野もしっかり対応し、一歩も引かない。瀬川は、小さな左右ボディを連打し梶野をロープに押し込む。
3回、前のラウンドに攻め込まれた梶野は、プレッシャーをかけながらボディを巧打。そして瀬川のガードが下がったら、顔面に左右フックの連打を浴びせる!瀬川は、クリーンヒットを貰いつつも前に出ることで追撃を防ぎ、ダメージの回復を待っているようだ。
そして最終4回、打ち合いの中で、梶野の左フックがクリーンヒットする頻度が増え始めた矢先、梶野と瀬川の右ストレートが、クロスカウンターのように交錯!大きなグラつきはなかったが、レフェリーはダメージの蓄積を考慮して瀬川をストップ。梶野がTKOで勝利した。
瀬川欧太郎選手、早いレフェリーストップに困惑したかと思うが、まともにクリーンヒットを貰っていたので、今回はレフェリーの判断に感謝。ただ、アグレッシブで勇敢なファイトスタイルは、多くのボクシングファンの心を掴んだに違いない。
梶野翔太選手、すっかりプロ仕様に進化を遂げた!乱打戦でも押し負けないフィジカルの強さとスタミナに加えて、ハートも証明した。そして何より、的中率の高さが今回のストップを呼び込んだ!末恐ろしい19歳だ!
東日本新人王の北本慶伍は、豪快なパンチであっという間にKOしてしまうハードパンチャー。圧倒的なパワーと暴風雨のような連打で突き進む。
西日本新人王敢闘賞・西軍敢闘賞の友良瑠偉斗は、俊敏なフットワークと、下がりながらでも的確に急所を打ち抜くカウンターが武器の左ボクサーファイター。
東の豪腕ファイターと西のカウンターパンチャーの対決に、どうしてもKO決着を期待してしまう注目の一戦!
試合は1回、両者、ジャブで牽制し合う慎重な立ち上がり。友良は北本の強打を、北本は友良のカウンターを警戒しフェイントを掛け合う。2回も慎重な試合展開は続くが、プレッシャーをかけてジャブを出し、試合を作っていたのは北本か。3回、北本の左リードジャブに友良は右フックを被せるが、あと一歩踏み込めず距離が遠い。逆に北本の右ストレートが届く。4回、北本のジャブが邪魔をして、友良は自分のボクシングが出来てないように見える。
そして最終5回、北本はジャブの連打で距離を測ると、右ストレートを打ち込み、友良からダウンを奪う!これは、急所を打たれたダメージというよりは、北本の圧力で倒されたようなダウン。再開後も北本のワンツーは、友良を弾き飛ばし続け、試合終了のゴングを聞いた。判定は3-0で北本の勝利!大差が付いた判定だった。
友良瑠偉斗選手、北本選手の強打を警戒しすぎたのか、慎重になりすぎ、本来のアグレッシブな攻撃を発揮することができなかったように見えた。
北本慶伍選手、ディフェンシブな試合展開が続いた中で、最終ラウンドにダウンを奪うあたり、ハードパンチャーの勝負強さを示した!パンチを持っている選手は特だ!
東日本新人王の矢野円来は、多少打たれようとも、倒されようとも、最終的に倒し返せばいいという荒々しいボクシングが魅力的なファイター。
中日本新人王の山本愛翔は、テンポの速いリズムボクシングを展開し、豊富な手数とスタミナで煽るボクサーファイター。今大会、最年少18歳。
好戦的なファイター同士の対決、KO必至のカードなので一瞬も目が離せない!
試合は1回、スピーディで重さを感じさせる右ストレートの交錯で始まる。矢野の右ストレートに対し、山本も相打ちでパンチを繰り出す!お互いに的は外れているが、バツン!という大きな音から、これがまともにヒットしたら、ひとたまりもないと思わせる。その直後、今度は山本の右ボディが矢野に突き刺さると、矢野は膝をつきダウン!ダメージは感じさせなかったが、先にダウンを奪われたことによる焦りはあったかもしれない。
再開後、矢野はいきなりの右ストレートで強襲するが、山本もそれに反応し相打ちを狙う。矢野のパンチが先に出ているのに、同時に着弾するあたり、ハンドスピードは山本が勝っているのか。強気の矢野が、今度は左フックを打ち込むが、それにも山本は反応し左フックの相打ちで返す!それが軽くヒットし矢野は一瞬グラつく!しかし、矢野は続けざまに2発目の左フックを放つ!しかし、またしても山本の左フックがクリーンヒット!矢野は膝が落ちかけたが、さらに3発目の左フック!待ってましたとばかりに、山本の左フックがドンピシャのタイミングで炸裂!矢野は失神してキャンバスに沈み、即座にレフェリーが試合を止めた。終わってみれば、54秒のKO劇だった。
矢野円来選手、清々しいほどにアグレッシブに攻撃する姿勢はプロボクサーとしての魅力に溢れている!初黒星を喫してしまったが、再起を願わずにはいられない選手だ!
山本愛翔選手、これまでKO勝利はなかったのが信じられないほど、抜群のタイミングで圧巻のKO勝利だった!後から出しても先にヒットするパンチのスピード!反則級の強さを見せつけた。これまで1敗しているが、その相手がデビュー戦で対戦した、西軍MVPの村田碧選手というのも因縁を感じる。今後のストーリーも俄然、楽しみになってきた!
東日本新人王・MVPの西屋香佑は、プレッシャーをかけ、接近戦に持ち込み強打を打ち込むファイター。現在、3連続KO勝利中で一発の破壊力は折り紙付き。
西日本新人王・技能賞の宮下椋至は、アウトボクシングも、接近戦も出来る技巧派サウスポー。技術で捌くだけではなく、打ち合いにも応じるハートの強さもある。
典型的なファイター対アウトボクサーの構図だが、試合展開は想像を超えたものになった!
1回、突貫ファイターの西屋は、ブルドーザーのごとくジリジリと距離を詰め左右フックを叩きつける。一方、宮下はワンツーで西屋を止めると、ポジションを変える足を使ったボクシングをしようとする。しかし、西屋の突進は止まらない!宮下は、度々ロープに詰められて連打を浴びるが、打たれっぱなしにならずに反撃をする気持ちの強さを見せる。
2回も西屋のプレッシャーは止まらない。ロープまで詰めると左右ボディから連打を浴びせる。だが、宮下も右フックを引っ掛けてポジションを入れ替える。
3回、足のある宮下に対し、西屋はボディを集中攻撃。しかし、西屋の単調になりつつある攻撃に対し、宮下は左ストレートを打ち込む。
4回、西屋は再び回転力を上げて、ロープ際で打ち合いに持ち込む!これは完全に西屋の勝利パターンで、このまま打ち崩すのかと思いきや、宮下も必死に食い下がり、互角の打ち合いに!両者の死力を尽くした戦いは、最終ラウンドへ!
そして最終5回、西屋はラストスパート!宮下をニュートラルコーナーに詰めると左右連打で畳み掛ける!西屋としては、ここで強打を叩き込み倒し切るか、もしくはレフェリーストップを呼び込みたいところ。その怒涛の連打の迫力に圧倒されていた!ところがしかし、宮下もここが勝負どころとばかりに、連打で応戦!上体を回転させながらパンチを返す!お互いにクリーンヒットを貰い、顔面が弾かれてもパンチだけは止めなかった。その打撃戦は最終ラウンドのゴングが鳴るまで続いた!なんと、実に90秒間ノンストップで続いたのだ!激戦は判定に持ち込まれ、2-1で西屋が勝利を手にした!
宮下椋至選手、西屋選手が得意とする接近戦での打ち合いでも堂々と戦い抜いた!前評判通り、ハートの強い選手であることを証明した。敗れはしたが、むしろ評価を上げた試合だった。
西屋香佑選手、得意の接近戦に持ち込むも倒し切れず。全日本のレベルになると、必勝パターンが通用しない選手が出てくることを身をもって学んだのでは。これが、さらなるレベルアップの糧になることを期待する!
東日本新人王の高橋秀太は、頭を付けた接近戦でのボディ攻撃から崩していく、手数の多いボクサーファイター。得意の接近戦で打ち勝ち、倒すことが出来るか注目。
中日本新人王・西軍MVPの村田碧は、豪快な倒しっぷりが注目されがちだが、丁寧にジャブから組み立てて、ストレートパンチを打ち込む、基本に忠実なボクサータイプ。
同門対決を制し、3度目の正直で決勝に進出した激闘型ファイターと、これまで全勝の天才肌との一戦!勝敗の行方は!
1回、高橋は左フックを振りながら距離をつめる。しかし、村田は冷静に左フックの相打ちを狙い、先にヒット!スピードの違いを感じさせる。村田は上下のジャブを使い分けて、中間距離をキープし、右ストレートで突き放す。
2回、接近戦に持ち込みたい高橋は、荒っぽく飛び込むが、村田はジャブ、ワンツーで中間距離をキープ。接近したい高橋のクリンチが多くなる。
3回、村田は左右ボディでガードを下げさせると、そのまま顔面にも左右フックを返し、高橋をバタつかせる。こらえきれずクリンチした高橋だが、そのクリンチを振り払って放った村田の右ショートパンチがヒット!高橋は膝から崩れ落ちダウン!高橋はゴングに救われる。
そして4回、ゴングが鳴って早々に、村田は左フックからの右アッパーで2度目のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。
高橋秀太選手、接近しての乱打戦に巻き込み活路を見出したかったが、相手のスピードと的中率に対応できなかった。
村田碧選手、西軍MVPの実力を関東で知らしめた!決して強振していないのに、確実にダメージを蓄積させるパンチの硬さを感じた。そして何より、ジャブから試合を組み立てる堅実なボクシングに隙が無い。次世代のスーパースター候補として、今後も注目していきたい選手だ!
東日本新人王の佐野篤希は、出入りの早いフットワークと強打のカウンターを武器に、これまで5勝4KOの高いKO率を誇るサウスポーのボクサーファイター。
西日本新人王の弘田一誠は、中間距離を保ちつつ、L字ガードと独特のリズムでカウンターを狙う、トリッキーなボクサーファイター。中南米の選手のようなバネと野性味が特徴的。
切れ味鋭いパンチを持った選手同士が、まさに“真剣”を切りつけ合うようなスリリングな試合となった!
1回、両者、フェイントの掛け合い。手数は少ないが、見えないパンチが飛び交っていることがイメージできる、そんな緊張感のある立ち上がり。
2回、佐野は左ボディストレート、左ストレートを巧打。しかし、深追いはしない慎重な姿勢は変わらない
3回、佐野はプレッシャーをかけて引田を下がらせるが、引田はL字ガードで、佐野の打ち終わりにカウンターを狙う。
4回、決定打の欲しい佐野は、手数を増やしながら前に出るが、引田の右ストレートがカウンターで浅くヒット!すると佐野がニヤリと笑みを浮かべる。「なかなかやるな」と佐野のセリフを勝手に脳内再生!すると、引田もニヤリと笑い返す。まるで、ボクシング漫画のワンシーンのようで目が離せない!そして、引田の動きも大胆になってきたところで、引田の右ストレートがすれ違いざまにクリーンヒット!佐野は大きくバランスを崩し、あわやキャンバスに手をつけそうに!このラウンドは明確に引田が取ったラウンドだろう。
そして最終5回、挽回したい佐野は、フェイントをかけながら、引田にパンチを出させて、カウンターのカウンターを狙う。しかし、ここでも佐野の右フックに対し、引田の右ストレートがカウンターになりクリーンヒット!再び大きくバランスを崩しダウン寸前に!絶対絶命のピンチの中、ゴングに救われた。
注目の判定は、2-1で佐野の勝利!割れた判定ではあったが、4回、5回は確実に引田が取ったラウンドなので、序盤の痺れる展開の中、前に出ていた佐野がポイントに流れていたという事だろう。
弘田一誠選手、絶対にカウンターを決め切れるという自信が満ち溢れていた。スリリングな名勝負となったが、引田選手の存在があってこそ!新人王戦での勝負には敗れたが、さらに高いステージでの再戦に期待がかかる!
佐野篤希選手、後楽園ホールに押し寄せた多くのファンの期待に応える勝利!まるで、武蔵と小次郎のような緊張感のある名勝負を演じ、もっともっとファンが増えるのでは!カウンターは当たるのも、貰うのも紙一重。もし再戦があるとしたら、今度は逆に打ち込んでくれるだろう!
東日本新人王の早坂峻は、高校ボクシングの名門、武相高校出身。アマチュア出身らしく攻撃と防御のバランスがとれた、まとまりの良いボクサー。
西日本新人王の寺下列は、巧みなステップワークで距離感を支配する技巧派サウスポー。懐の深さで相手を翻弄し、鋭く打ち込む左ストレートが武器。
試合は、積極的に攻め込む早坂と、防御しながらも隙を狙う寺下の“盾と矛”のような試合となる。
1回、早坂はプレッシャーをかけながら距離を詰め、左フックを打ち込むが、寺下は巧みなフットワークでいなしながら、左ストレートで応戦。2回も早坂の強烈なプレッシャーはつづく。しかし寺下は、後退しつつも被弾はほとんどなく、アウトボクシングを展開する。どちらが優勢に試合を進めているのか、採点が難しいラウンドが続く。
3回、強引に攻め込む早坂をサイドステップでかわす寺下だったが、足だけでは早坂の攻撃を止めきれず、打ち合いに応じる。この展開は早坂が有利か。4回、手ごたえを掴んだ早坂が接近戦に持ち込むと、寺下はもうステップでかわすことが出来ずにクリンチ。頭が近い揉み合いの中で、偶然のバッティングがあり、寺下は右目を腫らす。
そして最終5回、早坂は決定打を打ち込もうと、さらにプレッシャーを強めるが、アウトボクシングにスタイルを戻した寺下が、下がりながらも左ストレートをクリーンヒット!両者が持ち味を発揮した試合は判定へともつれ込んだ。判定は1-2僅差で寺下が勝利した!
早坂峻選手、常にプレッシャーをかけて攻撃し続けていたので、てっきり早坂選手の手が上がるものかと思っていた。動く標的を仕留めきることが出来なかったが、積極的な攻撃姿勢は素晴らしかった!
寺下列選手、下がりながらも試合をコントロールするテクニックは一級品。フットワークのある技巧派サウスポーという、攻め崩しにくいスタイルは希少な存在。ユーモアのあるキャラクターも相まって、将来が期待される選手だ!
東日本新人王の杉浦義は、ガードを高く構え、グイグイとプレッシャーをかけ接近し、いきなり打ち込む変則的な右ストレートが武器。
西日本新人王の丸山勇人は、回転力のある連打で、アグレッシブに攻撃するスピードスタータイプのボクサーファイター。
お互いに好戦的なファイター同士の対戦。打ち合い必至の状況で、どちらの的中率が上回るのか!
試合は1回からテンポの速い打撃戦に!杉浦は左ボディから右ストレートを返すコンビネーションで距離を詰めると手数が止まらない。丸山は後退を余儀なくされる。しかし2回、丸山は左右アッパーで、杉浦のガードを破る。つづく3回、エンジン全開の両者がリング中央で足を止めて、打ちつ打たれつのボクシングを見せ、歓声もヒートアップ!
4回、再びリング中央での打ち合い!杉浦の回転力に丸山もついてくるが、ヒットしているのは杉浦のパンチか。そして最終5回、両者、風車のような手数は止まらないが、杉浦のパンチに丸山の顔面が弾かれるシーンが増えてくる。徐々に後退し、ロープに詰まった丸山はたまらずクリンチ!ますます回転力の上がった杉浦は、連打の中で左フックを度々クリーンヒット!ダウンしてもおかしくないタイミングでのカウンターだったが、丸山も最後まで反撃の手を緩めなかった。判定は3-0で杉浦の勝利!第1試合から、会場を大いに沸かせる打撃戦だった!
杉浦義選手、持ち前の激闘スタイルのボクシングを貫き、押し切った。これだけの手数と突進力を得るため、相当に過酷なトレーニングを積んできたことが、うかがい知れる内容だった!
丸山勇人選手、持ち前のスピードを活かしたボクシングで優位に試合を運ぶことが出来なかった。しかし、打ち合って止めなければ、もっと一方的に攻め込まれたかもしれない。敗れはしたが好ファイト!
今年の全日本新人王決定戦は、東軍の7勝、西軍の5勝だった。一昨年、昨年と負け越していた東軍の巻き返しが光った結果だった。
そんな彼らの健闘を称え、敢闘賞、技能賞、最優秀選手賞が発表された。
【敢闘賞】梶野 翔太(角海老宝石)
【技能賞】村田 碧(松田)
【最優秀選手賞】山本 愛翔(カシミ)
次は日本チャンピオン!そして、未来の世界チャンピオンを目指せ!
U-NEXTでは、今回レポートした『全日本新人王決勝戦 WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT 特別編』を2025年1月20日まで配信中!
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