木村拓哉演じる、凄腕だが性格に難ありのシェフ・尾花夏樹が、12月29日(日)に放送された完全新作のスペシャルドラマ『グランメゾン東京』で5年ぶりに帰ってくる!12月30日(月)から公開している映画『グランメゾン・パリ』に先駆けて放送された今作では、鈴木京香扮する早見倫子がシェフを務める「グランメゾン東京」がミシュランの星を失う危機に…。
それは、コロナ禍を乗り切るために組んだ大手企業傘下のコンサル会社に振り回されているせいだった。さらに、パリへ行ったはずが行方知れずになっていた尾花は、なんと新たな店「メイユール京都」で働いていて…。
平古祥平役の玉森裕太らおなじみの“チームグラメ”のキャスト陣も再集結。さらに、コスパ重視のコンサル会社社長・明石壮介役に北村一輝、独創的な料理で倫子を脅かす「メイユール京都」のシェフ・湯浅利久役に窪田正孝という新たな顔ぶれも加わり、波乱のドラマが紡がれる。5年ぶりに尾花を演じた木村拓哉が、新作への思いを語ってくれた。
──映画『グランメゾン・パリ』に先駆けてスペシャルドラマ『グランメゾン東京』が放送されました。まずは、この「グランメゾンプロジェクト」が立ち上がった時の感想を教えてください。
木村:やっぱり非常に嬉しかったです。ただ、パンデミックさえなければ、もっと早いタイミングで尾花たちと再会することができたかもしれないですよね。非常にやりたかったけど、できる状況じゃなかったというのが正直なところで…。
コロナ禍を経て、今のタイミングでもう一度この話を立ち上げるのならば、あの時間をなかったことにしてはいけないんじゃないかと思ったんです。もちろんドラマはフィクションですけど、実際の飲食業界では、あの難局を踏ん張れた方もいれば、お店を閉じるしかなかった方たちもたくさんいました。そこをすっ飛ばして描くのはどうもイヤだなと。プロデューサーの伊與田(英徳)さんとお会いした時にも、そういうお話をして、それで今回のスペシャルドラマは今の形に作らせていただきました。
──コロナ禍をすっ飛ばしたくないと。
木村:飲食店は“料理を作ってお客様に食べていただく”という流れだけで役割を果たせるわけですよね。でも、志のある料理人は、その食事を喜んでもらうために、素敵な時間を過ごしていただくために料理を作っている。お客様がワクワクしてくれる料理を考え、作り、提供し、食べていただいて、最終的に「すごく素敵な時間だった」と帰っていただく。お店とお客という関係性であっても、究極のコミュニケーションだと思うんです。
でも、その大事なコミュニケーションを取りたくても取れなかった時間があったという事実は、すごく重要なことだと感じたし、この作品は飲食業界のお話なので、そこはしっかり描きたかった。
前作のドラマシリーズはコロナ前だったので、現実の時間経過はまったく関係なく、普通に「皆さん、お久しぶりです」と出てくる見せ方もなくはなかったんです。でも、飲食をテーマにする以上は、避けて通るのは違うと思ったんですよね。
──ご自身が演じる主人公・尾花夏樹との5年ぶりの再会はいかがでしたか?
木村:尾花夏樹を通じて、また改めて料理というエンターテイメントのいろんな瞬間に立ち会えたし、いろんな思いもさせてもらえました。今年は「ミシュランガイド東京2025」の掲載店発表セレモニーで、三つ星に選ばれた方たちの屋号を発表させてもらったんです。選ばれることの名誉や責任、プレッシャー、そして星をすでに持つ方たちがそれを維持する大変さ…そういうものを、僕は尾花夏樹を通して一部分だけでも味わえたんです。しかもそれは、自分ひとりだけで味わったものではなく、過去のドラマシリーズに引き続き、『グランメゾン東京』のスペシャルドラマで料理監修をしてくださった「カンテサンス」の岸田周三シェフは、今回も三つ星を取られましたけど、実際に彼がお店で出しているメニューもドラマ内で使わせてもらっています。共演者もスタッフもそうですし、撮る人、撮られる人がひとつのチームになって、その中での特別な価値観、世界観をものすごく煮詰めていくような作業は、やっぱり楽しかったですね。
──もともとご自身は、ミシュランに対してはどういう印象を持っていらしたんですか?
木村:正直、ミシュランタイヤの印象の方が強かったです。でも、作品を通じていろいろな時間を過ごさせてもらうと、ミシュランというその響きも違って聞こえます。
言い方は悪いけど、尾花という役を演じなければ、「ミシュランガイド」が生む価値、あの世界においての特別感にも興味はなかったかもしれません。でも、ミシュランに対してものすごい熱量とモチベーションを持って、ものすごいストレスと向き合っている方たちの存在を知ることができたから、ある意味、食べる前の「いただきます」がちょっと変わったかもしれないです。
添え物の野菜でもなんでも、すべての命をいただいてるということにも気づかされましたね。共演者やスタッフというチームも含めて、僕にとって尾花夏樹は宝物のひとつになりました。
──スペシャルドラマを演じる上では、尾花をどのように捉えていましたか?また、久しぶりに再開した倫子さんはじめ、“チームグラメ”の印象も教えてください。
木村:尾花は相変わらずな人なので…人に対するコミュニケーション能力が高い人ではないので、脚本を読んでいても「また、そっち通っていくんだ?」という思いはありましたよね。でも、彼がそんな人だから面白くなる部分もあるのかなとも思いますが。
倫子さんは倫子さんで、彼女なりのコロナ禍を過ごし、お店を守った背景があって、でも、だからこそ失ったものもあって…。ドラマの中でも実際と同じ、5年弱の時間が経過してますが、その間、各々の時間をしっかり生きてきた人たちなんだろうなというのは、脚本を読んで感じました。だから、再会という形にはなりましたけど、その過ぎた時間による隙間は、現場で一切感じなかったですね。
──それは、すぐに役を取り戻せたということでしょうか?
木村:僕自分が取り戻す、取り戻さないというよりは、ほかのキャストの人たちがその場に、そのシチュエーションに、その衣装を着ていてくれるだけで、各々のスイッチがカカカカカッて全員同時に入ったような感じ。もちろん、一切音はしないですけどね。“チームグラメ”のキャスト陣がそろったからこそ、ということがものすごく大きいと思います。
──コンサル会社社長・明石壮介役の北村一輝さん、「メイユール京都」のシェフ・湯浅利久役の窪田正孝さんといった、新たなキャスト陣も加わりました。
木村:北村さん、窪田さんという新たな存在…料理の言葉で比喩させてもらうと、また新たな素材が加わってくれたことで、こちらも味の出し方が変わったというか。そういう存在はありがたかったですね。
──ご自身で調理シーンを演じるからこそ感じる、料理の素敵さはありますか。
木村:現実で作った料理が相手に届いて、それを召し上がってくれた方の五感に届いた瞬間って、やっぱりいいですよね。もちろん、お芝居ではあるんだけど。
それこそドラマシリーズの第1話で、フランスの街のビストロの台所をお借りして倫子さんに手長エビのエチュベを出した時の料理は、全部現場で自分が作ったんですよ。ドラマの撮影なので、何回かカットを割って撮るわけですし、ちょうど倫子さんの背景に夕陽が落ちてくる画が撮りたいということで、冷えたエチュベを食べてほしくないから9皿ぐらい作ったんです。
──そんなにたくさん作っていたとは驚きです!
木村:たとえ、その料理の工程が簡単であったとしても、やっぱり食べる方の体の中に入っていく、その一部分を自分が担うってことの責任と喜びはものすごく感じましたね。お芝居ではあるんですけど、「すごくおいしい。なんで私には、これが作れないんだろう」って涙を流す倫子さんを目の当たりにした瞬間に、ものすごいスイッチが入りました。
──今回、尾花さんは金髪姿でした。映画『グランメゾン・パリ』で料理監修を務めたパリの三つ星レストラン「Restaurant KEI」の「小林圭シェフに敬意を込めて」と、公式サイトに書かれていましたが…。
木村:その「敬意を込めて」というのは、取材の際に用いた言葉だと思うんですが、実は僕自身は自分が髪色を変えるまで、小林シェフの画像を見たことがなくて、フタを開けてびっくりしたというのが真相なんです。もちろん、三つ星を取った日本人シェフがパリにいるというのは耳にしてたし、その彼が映画『グランメゾン・パリ』の料理監修をしてくれると聞いて、「すごいじゃん!」とも思っていたんです。で、『グランメゾン・パリ』に取り組む前に、このスペシャルドラマの台本を読んだら、とても面白かったんですよ。その時に「そうなると、あいつ(尾花)はどういう感じでいるんだろう?」と…。
尾花夏樹という人はきっと、「あの時のまんまだね!」と形容される人にはなってないだろうなと。そのタイミングでヘアサロンのスタッフさんに相談したら、「思い切っていっちゃいましょうか」と金髪を提案されてとりあえずやってもらったんです。で、衣装合わせに行ったら、みんな「ハァ〜!」って顔するんですよ。完全に不評じゃんと思っていたら(笑)、その中の何人かが出してきたのが小林シェフの写真で、「え、金髪なの?」って。
──シンクロしたってことですね。
木村:シンクロなのか、なんなのか(笑)。でも、パリにいる尾花が取った選択として、ナシではないのかなとは思って。パリに行くと毎回感じるのは…日本だとファッションにしろ容姿にしろ、流行でチョイスする風潮もあるじゃないですか。でも、パリは自分の「好き!」を大事にする人が多いから。「私はこれを羽織ってるのが一番心地いいの」という人ばかりの中にいる尾花夏樹が、どういう選択をしたのかな?と思うとこの髪色もアリなのかなと。
でも「かぶった!」とは正直思いました。小林シェフご本人とお会いした時も非常に照れたし。一瞬、お互いがお互いの頭を見ましたもんね(笑)。
──スペシャルドラマの方は、ドラマシリーズに引き続き、日本を代表するフレンチの三つ星レストラン「カンテサンス」の岸田周三シェフが料理監修をされています。
木村:岸田シェフには『グランメゾン東京』のお話を作る時に、ものすごく大きな太い柱になってもらいました。ミシュランの「掲載店発表セレモニー」でお会いした時は、なんだか変な感じがしましたね。もちろん、「カンテサンス」の岸田シェフなんだけど、「『グランメゾン東京』のスタッフが三つ星を取った!」という感覚も共存してるというか。でもやっぱりこの時の彼は「カンテサンス」の岸田シェフなんだよね(笑)。そういうドラマと現実の境目がなくなっちゃうような感覚は、キャストの間でもありましたよ。
──平古祥平を演じた玉森裕太さんをはじめ、ほかのキャストの方たちも実際に現場で料理をされたんですよね。それもすごくおいしかったと聞きます。
木村:僕も味は全部あたるからね。だから、現場も変な感じでした。フィクションだからカットがかかれば終わるはずなのに、ちゃんとみんな一口食べて味をあたって、「いや…」とか首をひねったりしてて。あなた、別に料理人じゃないよね、って(笑)。出演者として、俳優として料理をしてるはずなのに、本当においしくないと気がすまないというか。ドラマシリーズの時からずっとそのリアルとフィクションのスレスレの面白さがある現場だったなと思います。
ドラマシリーズで最初にパリでロケをした時の会話でも、鈴木京香さんが「うちの店で出すカトラリーとしては…どう思います?木村さん」って。「うちの店」って倫子目線で言ってるのに、最後に話を振ってくる時は「木村さん」なんだ!って(笑)。でも、それだけ“チームグラメ”のみんなの感覚や意識が、同じように共存していた現場だったなと思います。
木村拓哉演じる型破りなシェフ・尾花夏樹が完全新作スペシャルドラマで帰ってくる!すべての星を失ってしまった「グランメゾン東京」。“大人の青春”をかけ再び立ち上がることができるのか?
全国東宝系にて公開中
「グランメゾン東京」が日本で“三つ星”を獲得してから時が経ち、尾花夏樹は早見倫子と、フランス料理の本場・パリで、新店舗「グランメゾン・パリ」を立ち上げ、アジア人初となるミシュラン“三つ星”を獲得するために奮闘していた。
しかし、名だたる巨匠たちがしのぎを削る本場フランスで、フランス料理で“三つ星”を獲得することは、夢のまた夢。
かつてカリスマシェフと称された尾花夏樹は、挫折や国境の壁を乗り越え、仲間と共に世界最高峰の“三つ星”を手に入れることはできるのか──!?
木村拓哉が令和最初に挑む連続ドラマ!慢心から全てを失ったカリスマシェフが、三つ星レストランを目指し再び立ち上がる、“大人の青春”をかけたヒューマンストーリー。
玉森裕太主演。日曜劇場『グランメゾン東京』の配信版オリジナルストーリー。恋に、仕事に、グラグラ揺れながら成長していく若き料理人・平古祥平の物語。
(プロフィール)
木村拓哉
1972年11月13日生まれ。東京都出身。1991年にSMAPのメンバーとしてCDデビュー。俳優としては1992年に連続ドラマ『その時ハートは盗まれた』で頭角を現し、翌年の『あすなろ白書』、1994年『若者のすべて』で人気急上昇。1996年に主演した『ロングバケーション』が大ヒットし、以降は日本を代表するスター俳優として、『ビューティフルライフ』(00年)『HERO』シリーズ(01〜14年)『BG〜身辺警護人〜』シリーズ(18年・20年)、映画『マスカレード』シリーズ(19年・21年)など、多くの代表作を持つ。近年の『教場』(20〜23年)では白髪姿で鬼教官を演じ、従来イメージを覆す役柄にも挑戦。20年からはソロ歌手としても活躍中。