あの国民的お菓子の「たべっ子どうぶつ」が映画に!?製作が発表されるや話題騒然となった『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』が、いよいよ5月1日(木)に公開される。
みなが知る存在とはいえ、原作があるわけでもない、動物名がアルファベットで書かれただけのシンプルな知育菓子をベースに、映画としてどう成立させるのか──と、まったく想像がつかない中、ひと足先に試写を見て驚いた。『ソニック・ザ・ムービー』などで知られるマーザ・アニメーションプラネット制作で3DCGアニメとなったどうぶつたちが躍動する、笑いと感動とモフモフ感に、切なさまでもが渾然一体となったエンタテインメント超大作に仕上がっていたからだ。
そんな物語世界を構築したのは、「池田鉄洋」名義で俳優としても活躍する、脚本家の池田テツヒロ。斬新きわまりない今作企画の立ち上がりから5年、どのような過程を経て、そしてどんな思いを込めてこの物語を形作っていったのか聞いた。
──「たべっ子どうぶつ」といえば、お菓子自体は動物のシルエットをかたどったものですし、これまでのパッケージのイラストもどこか懐かしさのあるほんわかしたものだったので、今回のような壮大な世界観を持ったエンタメ大作になるとは想像していませんでした。
池田:私も、この企画を立ち上げたプロデューサーの須藤(孝太郎)さんと最初にお会いしたときは、『すみっコぐらし』みたいなほのぼのとした映画になるんだろうなと思っていました(笑)。
──動物もののアニメ映画の大きな成功例ですし、それを踏襲するのはある意味、自然なことだとも思います。
池田:実はそこから1年ぐらい、プロット作りはほのぼの路線で突っ走ったんですよ。30ぐらいは書いたでしょうか。そうしてようやく第1稿を書き上げて、これでオッケーが出るでしょうと思ったら、須藤さんが言ったんです。「まだいけると思いますね。0ベースで」って!
──0ですか!
池田:ええ。それで、だったら少人数でちゃんと話し合いましょうということになりまして。須藤さんとクリエイティブプロデューサーの小荒井(梨湖)さんと竹清(仁)監督と私の4人で話をしたんですが、そうしたら荒唐無稽で無謀なアイデアがどんどん出てきまして。
──ほのぼの系にじっくり費やした時間があったからこそ、「その路線ではない」ことを見極めることができ、本当に何がやりたいのかがはっきりと見えてきたということですね。
池田:そういう美談にしておきましょう(笑)。でも確かに、膨大な話し合いの時間の中で、アイデアだけでなく、各人が大切にしている原体験のようなものについても聞けたことは大きかったです。
たとえば、小荒井さんは子どもの頃に行ったテーマパークでキャラクターに抱きしめられたときの記憶が忘れられないという話をしてくださいましたし、須藤さんは『ポプテピピック』みたいなとんでもない(笑)アニメを作られていますけど、本当にピュアな心を持っていらっしゃることもよくわかりました。竹清監督も、そういったクリエイターの記憶や思いみたいなものを作品の中に入れていきたいという気持ちを強くされたみたいで。
──この映画の根幹作りのための、豊かで素敵な時間を過ごされたのですね。
池田:セラピーみたいなね。おかげで映画の完成までに計5年もかかりましたけど(笑)。でも確かにそのおかげで、膨大なアイデアを捨てて0からスタートした判断が間違いじゃなかったと思えるぐらい、“少年の心”みたいなものがふんだんに入った、子どもも大人も楽しめる作品になったんじゃないかとは思っています。
──“少年の心”ということでは、池田さん的にはどのようなものを入れ込んだのでしょうか。
池田:少年の、というか……もう今に至るまでずっとなんですけど(笑)、「ダメな連中がダメなままでいる姿に勇気をもらえる」みたいなお話が大好きで。
──具体的に挙げていただくと──。
池田:たとえば、『ポリスアカデミー』とか『裸の銃を持つ男』とか『オースティン・パワーズ』とか、次の作品が出るたびにワクワクしたもんです。中でも1番好きな映画といえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで、特に3本目(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』)なんかは、私、見ながらずっと泣いていたんですよ。ちなみに竹清監督も同じことを言っていました(笑)。
──そのあたりの、言ってみれば不謹慎系のおバカ映画的な作品は、このところ減ってきているような気もします。
池田:確かに、もうアメリカではそういうギャグ映画は制作しにくいのかもしれないですね。でも最近、映画に限らず、ダメな人がいたら本当にダメって烙印を押されてしまっている感じがして、それがちょっと怖いなと思って。ダメでもいいじゃん!と、ダメな連中がダメなままで最高じゃん!という映画を、私は作りたかったんですよ。
──ダメといっては語弊がありますが、確かに、今作のキャラクターたちはみんな、弱かったり傲慢だったり頼りなかったりといった欠点をそれぞれ持っていて、決して“正しい”ばかりではないですね。
池田:たとえば、らいおんくんなんて、トップスターだからと天狗になって、でも仲間に嫉妬して自滅していったりもしてという……。ふつう、企業さんが大事にしてきたキャラクターに、こんなにヘンな個性をつけるってありえないですよね。それを許してくださったことに関しては本当に感謝しています。同時に、そうやってキャラクターの方向性が固まったことは、この映画が本当に走り出すきっかけにもなりました。
──“ダメな”キャラクターに加えて今作のもうひとつの大きな特徴といえるのが、「悪に支配された世界の中、仲間を、人々を救おうと奔走する」ストーリーが柱であるにもかかわらず、どうぶつたちは“武器を持たない”し“戦うことをしない”という点だと思います。ここにはどのような思いを込めたのでしょう?
池田:9歳と7歳の子どもがいるんですが、キャラクター同士が戦うようなバトルものって、あまり見なくなっているんですよ。かわりに、ほのぼのギャグやちょっとシュールなアニメなんかを好んで見ていて。
──シュールなものやギャグ……それはまさに池田さんの血をひくお子さんたちだからではないかと(笑)。
池田:あ、そうか(笑)。でも実際、ちょっと流れが変わってきたのかなという気がしていて。戦わなくても十分楽しいから、戦いなんかいらないっていう世代が、もしかしてこれから増えていくのではないかと。だったら、ここらで戦わなくてもハッピー!みたいな映画を作れるんじゃないかなと思って、今回、劇中でなんとかバトらないようにと意識したんです。
実際に戦うシーンは出てきますが、特殊な戦い方をしています(笑)。もしかしたら、これからの子どもたちへ向けた新しいエンタテインメントになりうるのではないかと思ったりしています。
──世界を支配している悪が「わたあめ」だというアイデアも絶妙だと思いました。
池田:小荒井さんが、『トイ・ストーリー3』の、かわいいのに極悪なクマのぬいぐるみ(ロッツォ)がとにかく好きだとおっしゃっているのを聞きながら、(ああ、あのクマ、ピンクでもふもふしていたな〜)と思い出していたら、わたあめを連想して。わたあめって原材料は砂糖だけだから、“砂糖原理主義”的な存在にならないかなと。手につくとベタベタしてなんか嫌ですし。みたいな会話を会議でしている中で、他のお菓子を排除して世界征服を目論む巨大化したわたあめのキングゴットンを造形していったんです。
──わたあめを食べると小さなゴットンがポン、ポンと生まれるのですが、ぽわぽわした見た目に反してくっつくとベタベタするし、数が多ければガチガチに固められてしまうという。怖いというより、イヤ〜な敵ですよね。
池田:これって、たとえばXでポンっと発信される誹謗中傷なんかのひどいつぶやきと同じような感じじゃないかなと。ひとつひとつのつぶやきもイヤですけど、それが集合すると本当に世界が暗くなってしまうので、ちょっとどうにかした方がいいんじゃないか──みたいなことを、監督と深夜に話していたことがあって。
──ゴットンにはそのような意図も!
池田:後付けに近い話なのですが(笑)。でもそういった思いはわりと入っているような気がします。だから、ゴットンは巨悪といっても、決して特別ではない、誰でも陥る可能性があるものであって。だからこそ敵としての説得力も出たのかなと思っています。
──ところで、池田さんさんは、俳優として活躍されるかたわら、脚本、小説なども書いてこられた方ですが、もともとの出発点で志望していたのは、脚本家や映画監督だったとお聞きしました。
池田:はい。大学時代、本当は映画研究会に入ろうとしたんですが、見学に行ったら『惑星ソラリス』っていうカルト映画を皆で研究していて。自分は研究じゃなくて作りたいんだという思いがあったので、コンスタントに公演を打っていた演劇サークルに入ったんです。そしたらそのサークルは、1年は役者をやらなければいけないところで。そこからずっと役者をやる羽目になっちゃって今に至るという感じなんですが、確かにもともとは自分の作品の脚本を書いたり映画を監督したりしたかったんです。
──もちろんその夢は両方ともすでに叶えていらっしゃいますが、今作は特にオリジナルですし、壮大な大作の脚本を手掛けられたという意味でも、感無量なのではないかと。
池田:しかも、私、子どもの頃から「アニメージュ」を購読していたようなアニメ好きでもあったので、ずいぶん遠回りはしましたけれど、こうやってアニメ映画の脚本を書けるなんて本当にありがたいことだと思っています。
でも、予想以上にいい作品になったのは、あきらかに皆さまのお力で。私の脚本の至らない部分を監督が補ってくださったり、書ききれなかった部分をアニメーションの力や豪華声優さんのプロフェッショナルな声にだいぶ埋めていただいて、結果、なんだかとんでもない、日本最高峰の3DCGアニメ映画ができあがって。こういう映画、日本でも作れるんだ!とかなり興奮しました。これをきっかけに、3Dアニメがどんどん増えていくのではないかと思うと楽しみです。
──同じ5月には、脚本を担当された『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』(5月23日公開)も控えていますし、これを機に本来やりたいことであった脚本業に専念するといったお考えはあったりするのでしょうか?
池田:いえいえ、役者の方も、最初はやれと言われたからやっただけだったんですが、どんどん面白さを感じるようになって、今こうしているので。声がかからなくなったら、それはそれで寂しいですし、これまでのように両方やっていければ楽しいなと思っています。
舞台を中心にキャリアをスタートさせ、ドラマ『TRICK』シリーズなど、数々の人気作品に出演。コミカルな演技からシリアスな役柄まで幅広く演じ分け、個性的な存在感を見せつけている。また、コントユニット「表現・さわやか」を主宰し、脚本・演出も手がけるなど、作家としても才能を発揮。映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』では3年の歳月をかけて脚本を担当。
5月1日(木)公開
誰もが知る国民的おかし「たべっ子どうぶつ」がまさかの映画化!まさかの大冒険で映画館にやって来る!
この世の全てのおかしを排除し世界征服を狙う最凶な“わたあめ軍団”に捕らわれたぺがさすちゃんを助けるため、かわいいだけで戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたちが不可能すぎる救出ミッションに立ち上がる!?
でも彼らは…武器なし、策なし、意気地なし!
いったいどうする?どうなる!?
果たして彼らは仲間を助けて、世界を救えるのか!?
この春、笑いあり、感動ありの癒し系エンタメ超大作が日本をちょっぴりおかしくする!
配給:クロックワークス・TBSテレビ
アニメーション制作:マーザ・アニメーションプラネット
企画・プロデュース:須藤考太郎(TBSテレビ)
脚本:池田テツヒロ
監督:竹清仁(モンブラン・ピクチャーズ)
©ギンビス ©劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
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