『アンチヒーロー』最終回。「共に、地獄に堕ちましょう」稀に見る傑作、その結末は?
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ“な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』最終回をレビュー
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ”な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』第4話。明墨が手がける事件はすべて繋がっている?赤峰と紫ノ宮が衝撃の仮説にたどり着く──。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
明墨(長谷川博己)が東京拘置所で接見したのは、12年前に千葉県で起きた糸井一家殺人事件の犯人として死刑判決を受けた志水裕策(緒形直人)だった。
毎月手紙をよこす明墨に、志水は「もうやめてください。静かに死にたいんです」。明墨は絶句し、哀しげに口をつぐむ。
一方赤峰(北村匠海)は、明墨が接見した相手が志水と知り、糸井一家殺人事件を調べ始めた。
そんな中、明墨はあらたな事件に取り掛かっていた。
千葉県千葉市で3人の女性が襲われる連続不同意性交事件が発生し、3人目の被害者・仙道絵里(早見あかり)の目撃証言により、来栖礼二(渡邊圭祐)が逮捕された。既に弁護士・宇野(和田聰宏)が弁護人についていたが、明墨は宇野の不倫をネタに脅し、なんと弁護人の座を奪い取ってしまった。
来栖は宇野の指示により、最初の2件の犯行は自白したものの、目撃証言があった3件目の事件だけは自分はやっていないと証言していた。宇野は、無罪を主張する来栖に一旦犯行を認めさせ、その上で、裁判で無罪を勝ち取ると騙っていたのだ。
赤峰は、明墨が他の弁護士を脅してまで奪い取ったこの事件と、糸井一家殺人事件がいずれも千葉県千葉市で起きていることに気づく。
そして、緋山(岩田剛典)の事件では、殺人犯を無罪にする引き換えに検察の闇を暴いたこと。富田正一郎(田島亮)の事件では、無罪にするのかと思いきや、政治家の闇を世間にさらしたこと。どちらの事件でも、明墨が「不正を使って利益を得ようとする人間」を糾弾してきたことに着目。今回の事件にも、明墨の別の目的が隠れていると考えていた。
一方絵里の周囲を調査していた明墨は、思わぬ事実にたどり着いた。なんと、絵里は来栖のストーカーだったのだ。
明墨はここから、「3人目の被害者・仙道絵里さんの事件は作られたものだ」と仮説を立てた。
2件の事件が起きたものの犯人逮捕に至らず、バッシング報道も過熱し焦った千葉県警と、ストーカーをしていた相手・来栖が不同意性交罪の容疑をかけられる人間と知り、裏切られたと一方的に逆上した絵里。この二者が、絵里が3人目の被害者と捏造することで、利害関係が一致したという仮説だ。
そして、これを可能にするのが弁護士・宇野の存在だ。宇野は、裁判で情状酌量を引き出して罪を軽くする“人権派のカリスマ弁護士”として知られるが、同時に担当した事件はすべて有罪判決となっている。
明墨は、宇野と担当刑事の間に、有罪と減罪を天秤にかけた取引があると見立てた。さらには、千葉県警の刑事部長・倉田功(藤木直人)が絵里のアパートを訪れた写真も押さえており、千葉県警が組織ぐるみで犯人捏造を図っていることを半ば確信している様子だ。
ひとしきり語ると明墨は、「さあ、次はどっちを先に崩そうか」と紫ノ宮に鋭い眼差しを向ける。すると紫ノ宮は、明らかに動揺した様子で目を逸らした。
後日。赤峰が千葉県警に赴くと、紫ノ宮が他人らしからぬ様子で刑事部長・倉田を問い詰めている様子を目撃する。なんと、倉田は紫ノ宮の父親だったのだ。
紫ノ宮は「明墨先生の狙いは、最初から父だと思います」と告白を始めた。優しくて家族思いで正義感が強い父・倉田が笑わなくなったのは、12年前のある頃から。それはちょうど糸井一家殺人事件の時期で、当時倉田は千葉県警捜査一課の刑事だった。
そして6年前。紫ノ宮は、家の前で倉田に激しく詰め寄る明墨を目撃した。明墨は「倉田さん、あなたはあれを、不正に隠蔽したんじゃありませんか!?」と強く迫っていた。
その後、明墨は紫ノ宮を明墨法律事務所にスカウトし、紫ノ宮は真相を知るために明墨法律事務所に入所していたのだ。
倉田と明墨の因縁と、赤峰がたどり着いた12年前の糸井一家殺人事件が結びつき、赤峰と紫ノ宮はひとつの推察を得る。「明墨は仙道絵里の事件を使って、倉田を落とそうとしている。そしてそれは、糸井一家殺人事件における不正を暴くためである」と。
「志水さんは冤罪…」。赤峰と紫ノ宮は恐ろしい仮説にたどり着くのだった──。
時は遡り、明墨が東京拘置所にいる死刑囚・志水を訪れた日。
面会室を去ろうとする志水に、明墨は「志水さん!私があなたを、必ず無罪にします」。
いつもの不敵な笑みはなく、志水を繋ぎとめるように、覚悟を決めた表情で必死に語り掛ける。
志水は無言で去ってしまうが、静かに深く頭を下げる明墨の背中には、信念と闘志が静かに漲っているようだった。
赤峰と紫ノ宮がたどり着いた仮説は真実なのか?糸井一家殺人事件で隠蔽された事実とは何なのか?
ラストで明墨と対峙する検事正・伊達原(野村萬斎)は、明墨に立ちはだかる事件の黒幕なのか?それとも正義の最後の砦なのか?
物語は、急激に核心に迫り始めた。点だった登場人物や事件が結びつき、全体像が輪郭を帯び始めた。しかし、明墨の目的が明かされるほど、その奥にある真相は見えなくなるようで、今見えている事実さえも真実なのか疑いたくなってしまうほどだ。
第5話、来栖の公判で明墨は果たして何を語るのか──?
第4話はこちらから
第5話予告編はこちらから
公式サイトはこちらから
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ“な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』最終回をレビュー
hanatabaを手に、長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、岩田剛典、木村佳乃、野村萬斎らが笑顔で撮了
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ“な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』第8話をレビュー
お互いに相手に告げずに転職した先で、偶然に同じ部署で働くことになった真尋と直人の姿を描く第1話。夫婦であることを隠さなければならなくなるてん末がスリリング!
「グランメゾン プロジェクト」の一環として配信開始された名作ドラマから、俳優・木村拓哉の魅力を改めて語りたい!