『対岸の家事』第3話、“礼子”江口のりこは時代を映す鏡?「#肩代わり制度」がSNSでトレンド入りに
詩穂(多部)がピンチに陥った礼子(江口のりこ)から子どもを預かる。そこで問題となってくるのが、育児を“肩代わり”した分の報酬。放送後には、劇中で登場したワード「肩代わり制度」がX(旧Twitter)でトレンド入りを果たした。
4月22日に放送されたTBS系火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』第4話では、田辺桃子演じる医師の妻・晶子が登場。“囚われのプリンセス”となっていた晶子を詩穂(多部未華子)が連れ出す。ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』へのオマージュと見られるワンシーンも反響を呼んだ。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
苺(永井花奈)が体調を崩してしまい、詩穂はかかりつけ医の蔦村医院で診てもらうことに。2人を朗らかに出迎えてくれるのは、若先生(朝井大智)の妻である晶子だ。
晶子は元保育士で、若先生との結婚を機に退職。現在は医院の受付で働いており、いつも笑顔で気配り上手な性格から、詩穂と苺をはじめとする患者たちに慕われていた。
なおかつ若くて綺麗で、優しく経済力もある夫がいるから無理に働く必要もない。まさにシンデレラストーリーを体現する晶子は人々の羨望の的。だがある日、レディースクリニックで晶子と遭遇した詩穂は、彼女が抱えている苦しみを知ることになる。
地域の人にとって小児科と内科を標榜する蔦村医院は頼みの綱。大先生が入院したことで後継ぎ問題が顕在化し、晶子は姑だけじゃなく常連患者たちからも子供を急かされるように。しかし、なかなか子供ができず、身内以外には内緒で不妊治療に通っていた。
そんなことも知らず、過剰にプレッシャーをかけ、「ヒールが履けるのも今のうち」「カフェインは控えた方がいい」「体を冷やす服装はダメ」等々、余計なアドバイスまでしてくる常連患者たち。
それでも悪気はないのだからと受け入れ、「今の私は子供を産むことが仕事」と自分に与えられた役目を果たそうとする晶子。そこには「自分で選んだのだから」という意識があるのだろう。やりがいを感じていた保育士の仕事と医師の妻。その両方を天秤にかけ、晶子は後者を選んだ。それが間違いだったなんて思いたくないから、おいそれと弱音は吐けないのだ。
仕事と育児の両立に悩む礼子(江口のりこ)もそれは同じ。独身の頃のような働きは難しくなってしまったが、「でもやっぱり子供はかわいいから」と自分を納得させる。しかし、その苦渋味のある言葉さえも自慢や嫌みと捉える人もいるのだろう。
未婚の同僚が陰で自分のことを「持てる者は持たざる者への配慮がなくなる」と言っているのを聞いてしまった礼子。そのことから、勝手に晶子を“完璧なプリンス”と決めつけていた自分を省みる。
外から見ただけでは、その人の本当のことは何も分からない。確かに、晶子は礼子にないものをたくさん持っている。だが、仕事を辞めざるを得ず、なおかつ子供がなかなかできない晶子にとっては子供がいて仕事も続けられている礼子こそ“持てる者”なのかもしれない。
誰もが自分の選んだ人生を必死に生きている。だけど、別の人生を望んでしまう瞬間もあって、そういう時は誰かに愚痴や弱音を聞いてもらいたい。
かつて、キャリアウーマンの娘・里美(美村里江)に「人は子供を持ってこそ一人前」という考え方を押し付けてしまったことを後悔する知美(田中美佐子)から晶子を気にかけてあげてほしいと頼まれた詩穂だったが、同時に礼子から「不妊治療している人に子持ちの主婦が安易に言葉をかけるべきじゃない」と言われ、接し方に戸惑う。
でも、元はと言えば、専業主婦の詩穂とワーママの礼子も“持てる者”と“持たざる者”だった。中谷(ディーン・フジオカ)ともそう。生き方や価値観の違いからぶつかり、お互いにないものを持っている相手を羨ましく思ったこともある。それが今や些細な悩みも話せる関係になったのは、詩穂が橋をかけて対岸に渡ってきたからだ。
今回も詩穂は対岸に渡り、晶子の手を取る。不妊治療の件を知った常連患者たちから無神経な言葉をかけられている晶子に「ここにいちゃダメ」と声をかけ、半ば強引に外へ連れ出した詩穂。そのままバスに乗り、追いかけてくる姑から2人が逃げるシーンは、1967年に公開された米映画『卒業』へのオマージュと見られる。
同作と言えば、ダスティン・ホフマン演じる主人公が花嫁を結婚式場から奪い去るシーンが有名だが、重要なのはその後。バスに乗り込んだ2人は最初こそ笑顔だったが、徐々に不安げな表情に変わっていくのだ。
同じように晶子もはじめはスカッとした気持ちだったものの、あとから後悔が襲ってくる。だが、「大丈夫です」という詩穂の言葉に励まされ、へこたれる心を立て直した晶子。注意されたヒールを履いて医院に戻り、姑や常連患者たちに正面切って「私がこのクリニックのためにできることは子供を産むことだけじゃない」と宣言した彼女は、本物のかっこいいプリンセスだ。
晶子を救った詩穂の行動には、視聴者から「ヒーローすぎる!!!!!」「詩穂ちゃん、ナイス!」「いつも詩穂ちゃんの優しさと強さに救われる」「この街の希望の光のような存在」と絶賛の言葉が。
そんな詩穂にもかつて、父親(緒形直人)から逃げた過去があった。逃げた先に何があるかは分からない。それでも自分を傷つけてくる相手からは「逃げてもいい」「きっと大丈夫」と詩穂が確信を持って言えるのは、今が心から幸せだから。
早くに両親を亡くした虎朗(一ノ瀬ワタル)にとって、折り合いが悪くても実家がある詩穂は“持てる者”。「みんな自分が持ってないものの話になると冷静じゃなくなるんだよ」と虎朗が言うように、ぶつかることもある。そういう時は一呼吸置いて、相手の立場を想像すること。世間は何かと私たちを“持てる者”と“持たざる者”で区別し、分断を煽ってくるが、詩穂と虎朗のように冷静な姿勢でNOを突きつけたい。
第4話の視聴はこちらから
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詩穂(多部)がピンチに陥った礼子(江口のりこ)から子どもを預かる。そこで問題となってくるのが、育児を“肩代わり”した分の報酬。放送後には、劇中で登場したワード「肩代わり制度」がX(旧Twitter)でトレンド入りを果たした。
第2話では、ディーン・フジオカ演じる育休中のエリート官僚パパ・中谷が登場した。中谷の「専業主婦は贅沢」「旦那さんがかわいそう」発言に詩穂はモヤモヤ。そんな詩穂に夫の虎朗がかけた言葉が「めちゃくちゃ良い旦那」と視聴者から絶賛されている。
厚生労働省に勤務するエリート官僚で2年間の育休を取得したパパ・中谷達也を演じるディーン・フジオカさんにインタビュー。
礼子を演じる江口のりこさんにインタビュー。本作出演にあたって感じた思いや、江口さんが考える“対岸の相手”の意味合いを語っていただきました。
第1話では、詩穂が出会う働くママ=ワーママ・礼子の叫びに視聴者から共感の声が上がった。
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