若き人気政治家・清家一郎(櫻井翔)と有能な政務秘書官・鈴木俊哉(玉山鉄二)。清家の学生時代からの清家と鈴木の不可思議な関係に気付いた新聞記者・道上香苗(水川あさみ)は、清家の成功の裏で、いくつもの不審な死亡事故が起きていたことを知る…。
浩子(高岡早紀)の母が中国人・英華だったことを突き止めた道上。清家が母・浩子に影響を受けていたように、浩子もまたその母の影響を受けていたのか?そして、英華が生前よく口にしていた中国語で「復讐」の意味を指す言葉が示すこととは?清家の政治家としての根幹は、マイノリティに寄り添うこと。それすらも浩子がコントロールしているのか?ついに浩子の過去が明かされる、第9話をレビュー!
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
「弱者に寄り添うことが政治家としての根幹」とテレビのインタビューでにこやかに答える清家。
それをすっかりチーム感の生まれた道上と先輩・山中(丸山智己)&後輩・青山(曽田陵介)の3人がオフィスで見ているシーンから第9話はスタート!後輩くんにいじられてすねるイケオジに「かわいい…」などどほっこりしている場合ではない。
第9話ともなると、クライマックス序章である。
ワチャる山中&青山を道上が「シッ!」と諌めたところで、清家が新たな政策を口にする。それは、「首相公選制」。アメリカの大統領選のように、総理大臣の指名選挙を国民が直接行う制度のことだ。
あくまでも総理主導の政策という口ぶりだが、その裏には清家自身(あるいは浩子の)思惑が隠れているに違いない。
なぜなら、その制度で一番得をするのは、未来の総理候補・清家だから。
しかし、この制度は「民意をすくい上げる反面、総理に権力が集中して強権的な政治に陥る危険をはらんでいる」と話す道上。「ヒトラーがナチスを作ったようにか…」とつぶやく山中の言葉には、背筋がゾクッとさせられる。
国会の閣議で「首相公選制」を積極的に進めようと根回しする清家。そこに諸橋大臣(矢島健一)が横槍を入れてくる。諸橋がここへきて清家に対して、当たりが強くなったのはなぜ?ここにも裏がありそうだ。
総理にとりなされ、事なきを得た清家だが、ここでもまた、悲しいような空虚なような、いつものあの表情に…。やっぱり清家の本音は全くわからない!もういいから、早く本音見せて…。
それにしても、この清家の危うい表情には、妙に母性本能をくすぐられる。こういうシーンでもうっすら漂う「可愛げ」は、櫻井が演じるからこそ。
一転、今度は浩子のカット。「首相公選制」のネットニュースをスマホで見て、こっちもまた何を考えているんだかわからないアルカイックスマイルを浮かべる。高岡早紀の“笑っているのに怖い”演技、つくづくハマり役。
浩子もまた何を考えているのか大概ミステリアスだが、ただの悪女だけでは終わらなさそうな底知れない何かも微笑みの向こうに潜んでいそうでドキドキ…。
そして、道上はというと、そんな浩子の過去を探ろうと愛媛に行きたくてウズウズ!こういう時の水川の「ウズウズ演技」は、道上の心情がダイレクトに伝わってきて見ているこっちもウズウズ♥ 本当にこのドラマの役者陣の適材適所の名演技には毎回、ワクワクさせられる。
しかし、そのウズウズは山中パイセンの「却下」のひと言であえなく撃沈。浩子には殺しの黒幕である証拠がどこにもないのだ。予算をかけて動くにはまだ早い。
一方、行方不明の諸橋の元秘書・富樫の消息を追っていた鈴木は、富樫が諸橋の下で隠蔽や偽装工作といった汚れ仕事をしていることを突き止める。
諸橋は、BG株事件に政治家が絡んでいることを富樫を使って隠蔽している…。ということは、道上の父が死んだ事故も諸橋が富樫に指示してやらせたこと…?
そして、BG株事件の証拠を握るのは浩子。浩子は諸橋と繋がっているのか!?
富樫を押さえれば全てがはっきりすると踏んだ道上は、自身の過去にけじめをつけるためにも同行したいという鈴木と共に張り込み先へGO!
ここまでの展開で10分足らず。展開の早いこのドラマだが、今回はいつも以上に一気呵成に物語が進む!
鈴木は、かつて清家から「僕には成し遂げなければならない悲願がある」という言葉を告げられたと道上に話す。その悲願とはなんなのか?「浩子が植え付けた復讐に繋がっているのかもしれません」と寂しげにつぶやく鈴木。
「彼が自分を縛っているものから逃れたいと思っているなら、救ってあげたい」と鈴木に話す道上。それは鈴木も同じ気持ちだった…。
そんな中、富樫が山中パイセンが潜入するバーに現れる。しかし、裏から逃げられてしまった。
悔しそうな道上!
一方、マトリョーシカが見つめる清家の執務室。清家は道上のSNSを開き、「首相公選制」への懸念へのポストに「いいね」をポチリ。切なげな表情の裏にある本音…早く…見たい…。
と、ここで「富樫、あっけなく死亡!」という衝撃的ニュースが、山中から道上に電話で届けられる。さらに、その富樫の部下の男が瀕死の状態にあり、自身を「消される」ことを恐れるあまり警察に自供を始めたというのだ。
その顔写真を見て道上はおののく。彼こそ、清家の故郷・愛南町の路上で道上を襲った謎の男!
その男の自供で、道上の父の事故死は諸橋大臣の指示で富樫が動いた事件だったことも明らかに。いよいよ、BG株事件に絡む政治家の悪事が露呈する展開になったが、浩子との繋がりはわからない…。
愛する勇気のベッドの横で思いあぐねる道上。そこに重なるように執務室でマトリョーシカを手に取り、見つめる清家。
道上は「これ以上犠牲者を出す訳にはいかない」とオフィスにメモを残し、丸腰で愛媛の浩子のもとへ。そして、『悲願』にも書かれていた、浩子が幼い頃の清家に父親が和田島芳孝だと打ち明けたという思い出の場所・外泊で、道上は浩子から話を聞き出すことに成功する。
その報告を電話で道上から受けた山中は、浩子を「化け物」と呼び、道上を心配して「浩子は清家に仮面をかぶせたように、自分でも見せたい仮面を被ってるかもしれない。何が真実か見極めろ」とアドバイス。パイセンなんて舐めた呼び方してごめんなさい! ボス・山中! カッコいい♥ その横で見守る鈴木の2ショ、イケオジパラダイス♥(本当にしつこい)
それはさておき、風光明媚な外泊。浩子はこの場所を「人生で一番好きな場所」とつぶやく。彼女は、異国の地で戦後、母子がどんな暮らしをしていたかをとつとつと語り始める。
浩子の母・英華は、戦時中の満州で日本人の貿易商と結婚して来日。しかし、夫側の家族の反対で捨てられ、異国の地で一人にされたという。そして、英華は水商売の道へ。その客に半ば無理やり関係を迫られてできた子供が浩子。
「フーチョウは、憎むべき男の国で生きることしかできなかった女の歌」、とつぶやく浩子。
「その母の復讐心をあなたは引き継いだんですか?」と問う道上に、浩子は「母と違って男に溺れない生き方を選んだ」と話す。
男は勝手に自分に夢中になっておかしくなる。「でも、私は絶対に溺れない。他人だけじゃなく、自分自身も全てコントロールする」と力強く語る浩子。そのために教養を身に着けたという浩子は、そこで清家一郎の父となる和田島と出会うことに…。
当時、若手代議士の有望株だった和田島は、実は清家と同じように主体性のない人物だった。それに気づいた浩子は、和田島の気持ちを見事ゲット。以来、彼を裏でコントロールして、日本への復讐を成し遂げようとしたというのだ。とすると、和田島は清家の原型?
ここで場面は国会へ。政権へのダメージを懸念した総理の意向で諸橋は入院。それを総理自身から聞かされた清家は、「これからは君が頼りだ」と総理に言われ、「精一杯、頑張らせていただきます」と力強く答える。清家は清家で、執務室での儚げな表情と差がありすぎて怖い…。
やっぱり、恐ろしい親子…!
と、思っていたら、浩子にも人間らしい一面がちゃんとあるのだということが、ここで明かされる。和田島の子=のちの一郎を身ごもった浩子は、自身に中国人の血が流れていることを理由に和田島と別れることに涙、涙。浩子は、和田島のことをコントロールしながらも、本当に愛していたのである。
そこで浩子が思ったことが、もし、お腹の子が男の子だったら…母と自分の「復讐」の思いを今度は、その子供に託すこと!
そして、浩子は一郎に日本の名字を与えるため、資産家の清家嘉和と、彼に請われるまま再婚。しかし、嘉和は一郎の父への嫉妬でDV男と変貌し、困った浩子は和田島に電話で泣きつく…。その末に、事故で死んだ嘉和。
ということは、裏で手を回して嘉和を殺したのは、きっと和田島。浩子は、ここでも自らの手を汚さず、裏でコントロールしてまんまと嘉和の命を奪っていたのだ。しかも、和田島亡きあとは、本当に和田島が嘉和を殺すよう手を回したのかすら、もはやわからない…。
片や、政治の世界では、清家はそんな浩子の思惑どおり、着々と総理に権力を集中させるべく動いている。恐ろしすぎる!
出世する清家に「すべてを捧げてよかった」と言う浩子に、「そのために、何人もが犠牲になったとしても?」と憤る道上。
清家に権力を握らせて、この国をどうしようというのか?
全会一致で清家の法案が通った瞬間、「ありがとうございます」とお辞儀をして起き上がった時の清家の表情がまた、いろんな含みを感じさせて怖い!!執務室の儚げな子犬はどこいった!!!???
「ハヌッセンはあなたなのか?」と声を荒げる道上の叫びは、視聴者みんなの叫び。
しかし、浩子は「肝心なところにはたどり着けていない」と道上に言うのだ。どゆこと〜?
肝心のBG株事件と浩子との関わりは?
ハヌッセンの論文を送ったのは誰?
そして、忘れちゃいけない。亜里沙の行方は?
最終回まであと少し、まだまだ謎は尽きない!
第9話はこちらから
第10話予告編はこちらから
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